VoIP の導入

〜 ADSL モデムはすでに4台め..... 〜


VoIP とはなにか?

 VoIP とは Voice on IP の略で、IP ネットワークに音声データを載せる技術を指します。ADSL の普及に伴い、一般人にもネットワーク回線を簡単に、かつ、安価に利用することができるようになりつつある現在、データの送受信を行おうとすると、まず考えに浮かぶのは、このネットワーク回線を使う、ということだと思います。そこで、音声信号までも、データパケットとして、IP ネットワークに載せてしまおう、と考えたものが VoIP です。

 音声通話については、従来から NTT の公衆回線や、東京電話などの第一種通信事業者の提供する回線があるわけですが、なぜ VoIP が必要なのでしょうか?それには、コストの問題があります。NTT の公衆回線を例に考えてみましょう。NTT 回線で通話を行うと、利用する距離により、通話コストは右上がりに上昇していきます。これは、NTT が独自に敷説した回線を使用するために、距離に従って利用料金が嵩んでくるわけです。NTT も企業である以上、収益をあげないことには、会社を維持できませんので、ある意味では当然のことであるといえます。

 IP ネットワークを利用した場合、距離による料金の変化というものはありません。あくまでネットワークを利用するために必要な一定料金だけであり、それを利用する距離には、一切関係ありません。従って、この IP ネットワークを利用して音声信号を伝達できれば、非常に安価に済ませることができるわけです。

 企業が敷設しているネットワークが業務データを流すために必要としているわけですが、その中に音声信号を流した場合に、本体の業務データの送受信にさしつかえがでるのではないか、と思われる方もいると思います。たしかに、音声データとて、データ量0のわけがありません。しかし、業務データのパケットに比べれば、その大きさはさほど問題になるほどではありません。むしろ、本社=支社間などで頻繁に使用される通話料金が無料になることによる通話コストの削減は、著しいものがあります。私のように、通話先が 160kn 超になることも珍しくない人間にとっても、市内通話料金と同額で使えるというのは、非常にメリットがあります。

Flet's ADSL で VoIP を使うためには?

 Flet's ADSL で VoIP を使うためには、VoIP 対応 ADSL モデムか VoIP アダプタが必要となります。VoIP アダプタとは、VoIP 機能を追加するためのハードウェアで、これまでの ADSL モデムに追加することで、VoIP が利用できるようになります。もっとも、VoIP アダプタと ADSL モデムを接続することが必要になるため、取り回しが面倒という欠点はあります。一方、VoIP 対応 ADSL モデムは、VoIP アダプタの機能を内蔵した ADSL モデムとなっており、こちらを導入した場合、これまで利用してきた ADSL モデムと交換することになります。

 さて、どちらを導入すべきなのでしょうか?

 結論からいえば、VoIP 対応の ADSL モデムを導入すべきです。ADSL モデムを購入してしまうユーザーについては、VoIP アダプタだけをレンタルするほうが安価ですが、現在のようにころころ技術が変わっている内では、ADSL モデムを購入してしまうことの方が危険性は高く、一般的には ADSL モデムをレンタルしていると考えられるので、 VoIP 対応の ADSL モデムに変更すべきです。

    レンタル料
  1. ADSL モデム MN II -------- 490円
  2. VoIP アダプタ ------------- 380円
  3. ADSL モデム MN V -------- 850円

 これだけをみると、追加で VoIP アダプタを追加するだけで十分、と考えてしまいますが、実は ADSL モデム MNV は NTT が初めて公式にルータであることを認めた ADSL モデムなのです。つまり、これまでのように、ADSL モデムの他にブロードバンドルータを導入するまでもなく、複数台の接続が可能となります(要 Hub)。Flet's ADSL であれば、セキュリティの観点からも、ルータの導入が望ましく、MNV を導入するメリットは大きいといえます。

 さて、Flet's ADSL には、一般電話回線を併用するタイプ1と、専用回線として利用するタイプ2の二つの契約形態があります。試験期間中には、タイプ1でのみ VoIP の利用を認めていましたが、正式に VoIP のサービスを始めるにあたり、この規制が緩和され、タイプ2のユーザーにも、VoIP の道が開けました。

 タイプ2のユーザーが VoIP を使う場合にいくつかの使用制限があります。

  1. 100 番通話は利用不可
  2. 現時点では着信は不可

 (1) については、特に問題とはなりません。タイプ2で契約するということは、携帯電話や PHS などのような電話回線を持っているわけですから、VoIP で架けられなくても、携帯電話や PHS で 100 番通話を架ければ良いわけです。

 (2) についても、前述した理由と同様で、できなくても、特に問題はありません。なぜなら、着信に使う回線はすでに有している(携帯電話や PHS 等)はずなので、着信できればなおうれしいのレベルであり、絶対必要とはなりません。とはいえ、今夏を目処にサービスの提供が行われる予定となっていますので、もう少しだけ待つと、改善されるものと期待されます。

 ハードウェア的な話としては以上のとおりなのですが、これだけでは利用できないのが、VoIP をより面倒にしている一つの要因であるといえます。Flet's ADSL では、プロバイダを任意に選択できますが、この結果、現在使用しているプロバイダが IP 電話のサービスを提供していないと、利用できないのです。私が利用している @nifty では、IP 電話のサービスの提供がなされていましたので、追加で申し込みをすることで、使用可能となりました。

 プロバイダへ IP 電話を申しこむと、プロバイダから IP 電話の設定資料が届きます。@nifty では、A4 一枚の紙に、VoIP サーバーの名前、アカウント、ドメイン名が記入されたものが届きました。この資料をみて、必要な情報を VoIP 対応機器に設定することよって、VoIP が利用可能となります。

ADSL モデム MNVの導入

 Flet's ADSL では、長らく ADSL モデムのみをレンタルし、ルータ内蔵のものはレンタルしていませんでした。このため、Flet's ADSL で、複数台接続を行うために、別途 ADSL 対応ルータを購入する必要がありました。我が家でも、Planex BRL-04A というブロードバンドルータを故障^h^hではなく、呼称している製品を導入して、複数の PC からの常時接続環境を利用していました。

 ルータを交換することは、そのルータの提供する機能すべてを切り捨てることになります。従って、新しいルータに既存のルータの(使用している)すべての機能が搭載されていなければ、交換するわけにはいかない、ということになります。我が家で言えば、ローカルサーバーとバーチャルホスト機能は、新しいルータで設定できないと、せっかくのルータを『ただのADSLモデム(VoIP 付)』として使うしかなく、非常にもったいないことになります。

 箱にこそ、ADSL モデム MNV と記載されていますが、この製品は ADSL モデム内蔵ルータであり、取り扱い説明書はもちろん、NTT 側でも、ルータとして認識されている商品です。一部の特殊な設定を行うことで、従来の ADSL モデム MN II でも、ルータとして使用することができた様ですが、これは NTT の認めていない使用法になり、何らかの問題が発生した場合には、ユーザーに負担を求めてくる可能性があり、非常にダークな問題を含んでいました。これが、正式に NTT が認めたものを使用するわけですから、機能的な不具合があれば、いつでも NTT に問い合わせを行うことができるわけです。

ネットワークアドレスの変更

 MNV の設定は、一般のルータと同様に、ブラウザでほとんどの部分が設定できるようになっています。デフォルトでは 192.168.1.1 の IP アドレスが設定されているので、まずはここを我が家のネットワークアドレスに合わせる必要があります。なお、我が家のネットワークは DHCP を使用しているため、クライアントは特に設定を変更しなくても、ルータを変更するだけで、使用可能になるはずでした。

 ルータの IP アドレス変更は、一台のマシンを Hub 経由で接続して行いました。MNVでは DHCP サーバー機能が有効になっているため、このように接続することで MNV から IP アドレスの付番を受けることができます。注意しなければならない点としては、ルータの IP アドレスを変更した場合には、DHCP サーバーのネットワークアドレスも会わせて変更しなければならない、ということです。DHCP サーバーの変更を忘れてしまうと、ルータが同一ネットワークアドレスとならないため、ルータの IP アドレスが見つからない、ということになります。これは、一度経験しているので、二度と間違うことはないはずだったのですが、やはりやってしまいました(苦笑)。

静的 IP マスカレードの設定

 これは、BRL-04A でいうところの『ローカルサーバ』にあたるものです。何に使うのか、ということですが、これは VPN サーバーへの経路を設定するために行います。VPN サーバーは外部から直接アクセスできる必要がありますが、外部にはルータしか見えていないので、特定のポートへのアクセスだけを、ルータを通過させ、VPN サーバーに通す設定が必要となります。MNV のマニュアルでは、『VPN パススルー』となっていました。

 この設定を使うことで、LAN 上の Web サーバや pop3 サーバーなどを、それぞれのポートへのアクセスを通過させることで、外部から見えるサーバーとして有効活用できるようになるわけです。見た目としては、一つの PC で複数のサーバーを動かしているようですが、それぞれの処理ごとにサーバーを分けることができるため、負荷分散に勝れている方法です。

静的ルーティング

 これは、BRL-04A でいうところの『バーチャルホスト』に相当するものです。何に使うのかというと、外部からルータに対して流れてきたデータを、LAN 内の特定の PC に丸ごと転送するものです。Internet 側からみると、あたかもサーバーが直接公開されているように見えるのですが、実際にはルータを会してデータの送受信は行われています。なぜこのような機能が必要になるかというと、サーバーを直接 Internet に接続してしまうと、ネットワーク上の他の PC が Internet に接続するための回線を別途用意しなければならなくなるためです。サーバー上でルータ機能に相当することをさせることも可能ですが、かなりの負荷となるため、あまり好まれる方法ではありません。

 我が家の場合、静的ルーティングを使い、ルータに送りつけられるパケットはすべて IDS である snort に流し込んでいます。この結果、Internet から送り込まれる不正アクセスなどを検知することができます。Web サーバーやメールサーバーなどを動かしているわけではないため、それほどアクセス量は多くないため、あえてルータの外側に IDS を配置しています。ログをみていると、かなり背中が冷え込むような内容が検出されており、ルータなしで直接 Internet へ PC を接続することは、高速道路の路側帯を歩いていることと同程度か、それ以上の危険性があることがよくわかります。

VoIP の設定

 ここからが、MNV で初めて行う設定になります。VoIP では、いくつか設定しなければならない項目があります。大きくは、次の四点になります。

 これらは、プロバイダから通知されているはずなので、申し込みをしておかないと、設定ができません。今回は @nifty の設定資料に基づいて設定をおこないました。ただ、正直なところ、この設定資料はかなりげんなりしました。設定する項目名と @nifty から届けられた項目名が異なる上、NTT と @nifty のいずれもが、この対応について触れていないため、頭を柔らかくしておかないと設定できないのではないか、と思いました。私自身、一度誤った設定にしてしまい、VoIP が使用できなくなってしまいました。

 MNV の項目名と @nifty の設定資料の対応は、下記の通りです。このとおり設定したところ、我が家では動作しているようです。

VoIP の現実

 VoIP というと、あまり聞き慣れていないかもしれませんが、Yahoo の BB フォン、といえば聞いたことのあるかたも多いと思います。この Yahoo の BB フォンは、VoIP を民間レベルで初めて使用可能にしたものといえますが、実は電話料金の価格破壊と引き起こす要因となった Fusion Communications も、この VoIP を利用してサービスを行っているのです。Fusion Communications の場合は、電話交換機の先で音声信号をパケットへ変換して利用しているので、立派な VoIP の使用法なのです。また、VoIP に使うネットワークにデータを載せることで、プロバイダ事業も行うことができるのです。この Fusion Communications のサービスを、加入電話単位に導入したのが、Yahoo BB であり、IP 電話なのです。

 VoIP を利用した IP 電話には、大きくわけると、二つのタイプがあります。それは、音声信号をデータ化する手法の違いです。IP 電話として先んじた Go 2 Call では、PC のソフトウェアとして、音声信号をデータ化して送受信していました。この方法は、PC 上のソフトウェアとして動作させるため、導入コストは安価なものの、音声信号のデータ化には PC のパワーが非常に重要になり、その結果として、伝送遅延が発生してしまうこととなりました。このため、Go 2 Call では、登場したての携帯電話よろしく、非常に間延びした会話しか出来ませんでした。ほとんど実用的ではなかったとさえいえます。また、通話に使用する機器として、ヘッドセットの使用もしくはマイクが必須となり、電話をかけるというよりは、PC を操作する、という性格が非常に強かったことも特徴です。

 Yahoo の BB フォンでは、従来の電話機をそのまま使える、という売り文句がかなり響きました。電話の配線は変える必要がありますが、ユーザーにとっては、電話をかける行為にはそれほど大差なく、むしろ距離に無関係の通話料金が受けたとさえいえます。この方式では、専用のハードウェアを使用して、音声信号をデータ化することで、データの遅延をほとんど発生させずに、VoIP を使用することができました。

 VoIP が広く一般に広まるためには、VoIP を使っていると意識させることなく、ユーザーに VoIP をつかわせなくてはなりません。となれば、ソフトウェアによる PC ありきの VoIP ではなく、従来の電話機をそのまま利用できるハードウェアによる VoIP でなければなりません。いずれ、ソフトウェアの改良が進み、今以上の CPU パワーを利用するようになると、ソフトウェア型の VoIP も、十分利用可能になるかもしれませんが、こと電話という機能を考えたとき、PC が必須となる技術は、必ずしも有益であるとは限りません。ISDN の導入が好まれた背景には、絶対的な回線数の確保が必要条件となり、PC の高速データ通信は表には出てこなかったように、ADSL と VoIP は、これからの通新サービスを考えるうえで、非常に大きなターニングポイントとなるものと思われます。

 従来 NTT はブロック毎の領域を越えることには慎重でした。しかし、Flet's ADSL で IP 電話事業を行うということは、長距離通話サービスに NTT 東日本が乗り込んでくることを意味します。これまでは、長距離通話は NTT コミュニケーションが行ってきたところであったわけですが、それさえも、生き残るためには奪い合いとなりつつあるといえます。巨大企業と呼ばれる NTT ではありますが、世のあまねくところでサービスを提供しなければならないという足枷は、真綿で作った靴のごとく、次第に重くなってきているのではないでしょうか。


Last Updated 2003/04/06. Copyright Tazoe Kazuya . All rights Reserved 2003