世代交代

〜ThinkPad 570 の購入〜


 新しい ThinkPad を購入しました。購入したモデルは ThinkPad 570(2644-3AJ) で、標準添付のウルトラベースには、CD-ROM ドライブが装着されていました。標準状態では、CD-ROM ドライブは付属していないので、ありがたいことです。最近では CD boot を使うため、内蔵 ATAPI CD-ROM ドライブが付属するかどうかは、NotePC を購入する重要なポイントになります。

 ThinkPad 570 は、あこがれのモデルでした。私が愛用していた ThinkPad 560 のウルトラスリムの後継として登場し、ポートリプリケータの拡張形としてウルトラベースを付属させ、Office ではフルスペックマシンに、出先に追っていくときは本体だけを切り離したウルトラスリムボディで、と用途に合わせた使い方ができる、優れた ThinkPad です。特に ThinkPad 560 で問題と言われた、CD-ROM ドライブの搭載をウルトラベースという形で解決したことは、意味が大きいと思います。

1.ファーストインプレッション

 ThinkPad 570 を初めて触ったときの感触は、意外と重いな、でした。ウルトラベースが含まれているとはいえ、その重量は ThinkPad 600 よりも重く感じました。分割されたことによる、ケース重量の増加や、CD-ROM ドライブ+FDD という構成が重量を嵩んでいる要因であろうと思われます。  キーボードは TrackPoint IV が搭載されており、事前の情報収集で得ていたとおり、ThinkPad 600 と互換があるようです。ただ、日本語キーボードを使っていたのが半年以上前なので、感触については、はっきりとは覚えていません。

2.各部検証

 2−1.重量

 ウルトラベースを含めるかどうかで、かなり違います。ThinkPad 600 の厚みを 2 とすると、ウルトラベースありは 3 、ウルトラベースなしは 1.5 という感触です。つまり、ウルトラベースをつけなければ ThinkPad 570 は ThinkPad 600 よりも軽いのですが、ウルトラベースをつけると ThinkPad 600 よりも重くなるのです。出先で、CD-ROM ドライブが必要となるような場合、ウルトラベースを持ち歩くよりは、USB の CD-ROM ドライブのほうが軽くなるように感じます。

 2−2.厚み

 ウルトラベース自体の厚みは、ほぼ ThinkPad 570 と同じです。つまり、ウルトラベースを装着すると厚みがやく2倍になります。この厚みは ThinkPad 600 を 2 とすると、ウルトラベースありは 3 で、ウルトラベースなしは 1.5 という感触です。ウルトラベースをつけると、重量級ノートに早変わりしているように感じます。

 2−3.キータッチ

 キーボード自体は ThinkPad 560Z や ThinkPad 600 と同じなので、違和感はありません。私には不要な WIndows キーもないので、すっきりした感触をうけます。配置的にも、デスクトップ同様の 7段なので、デスクトップと併用しても違和感はありません。英語キーボードへ換装するかどうかですが、とりあえず WIndows を使ううえでは、特に問題もないので、このままにしようと思います。

 2−4.メモリ

 標準搭載の 64MB のまま、WIndows 2000 をインストールしましたが、若干のひっかかりがありますが、思ったよりはスムーズです、とはいえ、アプリケーションを入れる前でスワップされても困るので、近日中に 128MB へ増設します。それまでは、ThinkPad 600 から借りて使うことにします。ハイバネーションは 64MB のほうが軽いのですが(苦笑)。

 2−5. OS

 購入時点で HDD はまっさらになっており、一切 OS はない状態でした。そこで、付属してきたリカバリーCD を使ってリカバリーをかけてみました。リカバリーに当たって驚いたことは、プレインストール OS が Windows 95 であったことです。てっきり Windows 98 だと思っていたので、これは意外でした。マイナーバージョンアップがあったとはいえ、95年末に販売開始されてから、98年の Windows 98 発売まで、3年間に渡って販売されていたことに、軽い驚きを感じました。商品のライフサイクルとしては、かなりの長生きですね。  とはいえ、いまさら不安定さの残る Windows 95 で作業を続けるつもりはありませんでしたので、すぐさま Windows 2000 を導入しています。ではなぜ Windows 95 をリカバリしたのか、という疑問が残ると思います。これは、Partition Magic と Drive Image が Windows 2000 の Native Application ではないため、使用にあたってはいちいち DOS を起動しなおさなければならないためです。DOS を共存させようとすると、FAT16 の区画を作成しなければなりませんが、いまさら 32KB クラスタには戻りたくないので、さくっと Windows 95 OSR2 をベースに使うのです。なお、Windows 上から使うということで、Partition Magic については、32bit ドライバで管理されることになり、DOS とは比べ物にならないほど快適になります。  初期状態の区画設定は、FAT16 で 2GB、FAT32 で4GB となっていましたが、私の望みの区画容量ではないため、Partition Magic で切り直しています。現在の区画構成は

      C    1GB     FAT32   WIndows 95     boot
      D    3GB     NTFS    WIndows 2000   
      E    2GB     FAT32    DataDisk

 としています。退避の容易性を考え、データ用区画を分けています。昔から、変わらない区画設定です。ここで、Linux は入れないのか?という疑問を持たれる方もいるでしょう。しかし、今回は入れないつもりです。データ用の 2GB はすでに埋まり、最低限のシステムだけを入れたDドライブも、残り 1GB もありません。この時点で Office は入っていません。入れれば埋まってしまうでしょう。HDD を 20GB に変更することがあれば、どうなるかわかりません。

 2−6.ウルトラベース

 ThinkPad 570 で特徴的なのは、ウルトラベースと呼ばれるドッキングステーションです。このウルトラベースには、FDD と CD-ROM ドライブが内蔵できるようになっていて、不要時には本体を切り離すことができるわけです。ウルトラベース内蔵の CD-ROM ドライブはセカンダリ IDE に接続されているため、デスクトップ同様に、Windows 98 OEM 版や Windows 2000 アップグレード版で CD boot が可能になっています。

 ウルトラベースの発想自体は悪いものではありません。むしろ ThinkPad 560 のポートリプリケータを拡張して、CD-ROM ドライブが内蔵できたら、と思っていたほどです。実際 FDD と CD-ROM ドライブを内蔵していることで、希望はかなったと言えるでしょう。しかし、それでも不満はあります。それは、RJ45(Ethernet) のコネクタがないことです。発売時期からやむを得ないところもありますが、LAN が一般的になっている今では、Ethernet がないのは、デメリットです。特にレガシーデバイスは、Local にもつのではなく、LAN 内のどれかにあるものを利用することが多くなるので、有線結線が必要なことが少なくなってきています。この当時としては、難しい選択ではあったと思いますが、昨今の状況を考えると、こう思ってしまいます。もっとも、拡張ポートリプリケータには、RJ45 のコネクタがあるので、これを追加すれば、希望は一応かなうことになります。まあ、Yahoo オークションなどで、気長に探してみましょう。ただ、ウルトラベース+拡張ポートリプリケータでは、厚みがさらに増してしまうため、手放しで喜べるとはいえないのが辛いところです。

 ThinkPad 570 の販売形態は、ある意味特殊といえます。というのも、標準ではウルトラベースには FDD しか付属しません。リカバリ供給が CD-ROM であること、ウルトラベースに専用スロットがあること、を考慮しても、初期状態でなにもつけないというのは、ちょっと酷な感じもします。好意的に解釈すれば、ユーザーが真に望むものが装着できるといえますが、IBM の純正品となると、結構高価なので、購入を躊躇してしまいます。後半になって、ウルトラベースを標準添付しないモデルも出てきましたが、いっそこちらを主力にしておく方が潔いとさえ感じます。

3.総評

 ThinkPad 560 のウルトラスリム路線を引き継いだ ThinkPad 570 は、さらなる薄さを追求して、ThinkPad 560 を超える薄さを実現しました。そのうえでレガシーポートはもちろん、USB ポートまで装備するという充実ぶりです。CPU には Mobile PEntium II/366MHz を搭載し、十分なパワーと優れた小電力機能を備えており、バッテリによる連続運用時間は、ThinkPad 560E の倍に達しています。また、ウルトラベースを使用することで、Office では CD-ROM ドライブ付きのフルスペック PC となることができます。

 しかし、その反面として、ウルトラベースが中途半端になってしまった感があります。(1) 標準状態では FDD しかなく、CD-ROM ドライブは別に購入しなければならないこと、(2)レガシーポートは本体ポートを使うため、ポートリプリケータのように外してすぐに持ち出せるとはならないこと、(3) Ethernet がないこと、(4) PCMCIA がないこと、といった不満点があります。FDD はある程度必要度が高いといえますが、CD-ROM ドライブがオプションというのは、結構辛いと思います。新製品に 3rd Party が対応できるまでは、相当の時間がかかります。アメリカでは、ThinkPad 専用のオプションを販売している会社もあるようですが、国内の年間 PC 出荷量から考えると、決して採算が取れるとはいえません。となると IBM から純正品を購入することになるわけですが、オプションについては結構な値段がすることもあり、なかなか購入する気にはなれないのが現実です。レガシーポートについても、本体にレガシーポートを残してほしい気持ちに代わりはありませんが、ウルトラベースから気軽に外して持ち出すことを考えると、ウルトラベース側にレガシーポートがあっても良かったのではないかと思います。ウルトラベースには、搭載できるだけのスペースがあるのですから、残念です。Ethernet がないことは、現状のように 家庭内 LAN が当たり前になってきている現在だからこその問題でもあるわけですが、PCMCIA スロットもないために、Ethernet を使うためには、本体の PCMCIA を利用するしかなく、ウルトラベースの利便性を下げているといえます。本体並みの厚みをもち、いろいろな機能を搭載できる余裕があると考えられるので、このあたりは減点の対象になりますね。

 とはいえ、使いにくい PC ではありません。むしろ、運搬時にデッドウェイトになる CD-ROM ドライブと FDD を別の容器に移すことで、重量の負担は減っています。私のように、ThinkPad 用の外づけ FDD があれば、ウルトラベースは置いていけますし、外出用の CD-ROM ドライブはすでに持っている(Panasonic KXL-820AN)ので、切り離しできることはありがたいです。さらに ThinkPad 600 とオプション品を共通で使用できるため、これまで購入してきた各種デバイスも無駄になりません。コンビネーションを考えれば、悪くない選択だと思います。