USB CD-RW は使えるか

CRWP-i8USB の導入


 以前、CDR-P46USB という USB の CD-ROM ドライブを購入しました。4倍速のドライブは、十分な書き込み速度でしたが、USB 1.1 であることが裏目にでてしまい、バッファアンダーランが発生してしまい、書き込みに失敗することが、少なくありませんでした。その結果、中身のドライブのみが ThinkPad 600 に装着されて、再利用されることとなったわけです。CD-R の焼きつけ(書き込み)には、連続データ転送が必要となるわけですが、USB 1.1 では転送速度があまり高くないため、途切れてしまうことがあります。このため、USB は CD-R に向かないインターフェイスと私は考えていました。にもかかわらず、なぜ購入してしまったのでしょうか?

 現在の CD-R ドライブは、CD-R (CD Recordable) だけでなく、書き換え可能な CD-RW (CD ReWritable) にも対応しているものがほとんどです。もちろん、4倍速のままでなく、より高速な 8 倍速や 16 倍速といった高回転ドライブが登場しています。ドライブが高速になれば、書き込むべきデータも高速に流す必要があります。しかし、高速になればなるほど、転送がよりシビアになります。当然ながら、失敗する確率も、それだけ上昇してしまうことになります。4倍速でさえ、バッファアンダーランエラーが生じるのに、16倍速ともなればまともに焼けるとは思えません。

 そこで、メーカーでは驚くべき方法を考え出しました。バッファアンダーランはどのようにして発生するのか考えてみましょう。CD-R を作成する手順としては、(1) 焼き込み用バッファにデータを貯える、(2) バッファからデータを読み出し、メディアに焼きつけする、の2手順しかありません。バッファを介することで、データ転送に待ちを作らないようになっているのです。しかし、(1) のバッファへの転送が何らかの理由により途中で止まってしまった場合、メディアへ焼きつけするためのデータが不足してしまうため、連続記録ができなくなることが生じてしまいます。バッファアンダーランエラーとは、まさにこのバッファからのデータ読み出し量が一定値を下まわってしまった場合に発生するのです。そこで、焼きつけを行うために十分なデータがバッファにたまっていない時は、一度焼きつけを中断し、バッファにデータがたまったところで、中断地点から焼き直せば、理論上は連続して焼いたことと同じになるわけです。これが Burn Proof とか Just Link とか呼ばれている。焼きつけ失敗防止機能のことなのです。レーザーのコントロールが細かく制御できるようになったからこそ、一度中断した場所から、再度焼きつけ可能になったわけです。

 私があえて今回 USB CD-RW を選択した最大の理由は、この焼きつけ失敗防止機能が搭載されたためでした。USB 1.1 のような、あまり高速な転送が期待できないドライブであっても、焼きつけ失敗防止機能が搭載されたことにより、数倍安全に CD-R を作成できるようになったわけです。現在、ほとんどの PC で USB は搭載されており、Desktop PC であろうと Note PC であろうと、機種を選ばず利用できる環境が整ってきています。USB のドライブを選択した理由の一つは、この PC を選ばない、というところにもあります。ATAPI の内蔵型は確かに安価ですが、そのはほとんどがフルハイトのものであるため、Desktop PC でないと使用できないわけであり、NotePC に搭載できる Slim タイプはなかなか見かけることがなく、あっても、高価なドライブとなっていました。しかし、USB であれば、いずれの PC でも利用可能となるため、その時その時に応じて、使用可能となっているわけです。まあ、今回見つけたドライブが 2万円を切っていた、というのが私の背中を落とした最大の要因かもしれません(爆)。

 ところで、この焼きつけ失敗防止機能について、私は正直半信半疑でした。というのも、私が CD-R を焼く最大の理由が、車載用 CD の作成にあったからです。音楽 CD(以下 CD-DA と表記) は、Data CD よりも焼きつけ条件が厳しく、Data CD では問題なくとも、CD-DA ではピッチノイズが載りまくってしまうことなどを経験しているため、焼きつけ失敗防止機能GA働いた場合に CD-DA はきちんと再生されるのか?という疑問を持っていました。もっとも、焼きつけ防止機能がどのような原理で働いているか、今回このページをまとめるまで、まったく知らなかったのですから、勝手なものですね(笑)。

 購入したドライブは I/O Data の CRWP-i8J というドライブです。USB 対応で、CDx24/Rx8/RWx8 と基本性能はそこそこのドライブで、中身は NEC NR-8500A でした。焼き込み失敗防止機能としては、Just Link を搭載しています。このドライブの面白いところは、iCONNECT という I/O Data 独自のコネクタを搭載することで、インターフェイスを簡単に変更できる、ということです。今回購入したのは、USB1.1 対応のインターフェイスケーブル同梱ですが、これを USB2.0 対応のものに変更することで、USB2.0 に対応可能になり、また、PC カードインターフェイスケーブルに変更することで、USB 1.1 では発揮しきれない部分を改善させることも可能となっています。特に USB2.0 では、非常に高速なデータ転送が可能(400MB over)となるため、USB1.1 と異なり、大規模ストレージにも向くインターフェイスとなります。現在のところ、M/B のチップセットで USB 2.0 をサポートしているものはありませんが、次期チップセットにおいては、確実にサポートされてくると思われます。下手をすると、USB2.0 ですべてのデバイスをまかなうことも、スペック的には、不可能ではありません。あるいは、IDE インターフェイスのように、新旧取り混ぜて搭載されてくるかもしれません。もっとも、JustLink が機能する上では、USB 1.1 でも問題は発生しないはずではあります。


 さっそく、このドライブを使ってみることにしました。接続するマシンは ThinkPad 570 です。ThinkPad 570 には、USB ポートが二つあります。一つは本体部分にあり、もう一つがウルトラベース側にあります。さてどちらにつけようかとなったとき、少々考えましたが、とりあえずということで、ウルトラベース側に取りつけてみました。付属のドライバディスクを使って、サポートソフトウェアを導入すれば、ドライブそのものは準備完了となります。USB ですから、特に面倒なことはありません。続いて CD-R Writer を導入します。製品添付は B's Recorder GOLD でした。このライターソフト、そういえば、以前購入した JVC XRW4424 にも付属していて、初めてではないのですが、焼き込み環境を CRX510E に移行してからは WinCDR ばかりになり、実質初めて使うことになります。

 B's Recorder GOLD のインストールも特に難しい部分はありません。すいすいとインストールが進み、CD-R を作成する環境が用意できました。さっそく CD-R を焼いてみることにしました。焼き初めとして使用したのは、Redhat 7.2 ftp 版でした。Tower PC で落としたisoイメージを転送し、焼くわけですが、いつものように無線 LAN で転送をはじめてしまったため、コピー終了までは、結構かかってしまいました。後で気づいたのですが、iso イメージのような巨大なファイルを流すときは、Cardbus の有線 100Base-TX のカードを使えば、もっと時間が短縮できたのでした。

BzGold.jpg

 B's Recorder GOLD を起動した画面です。3ペイン構成になっていて、上部左側がフォルダツリーとなっており、上部右側が、焼きつけたいファイルリストとなっており、下部はトラックイメージです。

 データCD を作る場合は、上部右側のファイルウインドウに、焼きつけたいファイルを放り込めばOKですが、iso イメージの場合、ここに放り込むと、isoのファイル形式のまま焼きつけられてしまうため、元の CD-ROM には復元されません。

 実はうっかりやってしまい、2枚ほど、コースターを作ってしまいました。

 iso イメージは下部のトラックウインドウにドラッグする必要があります。

 書き込み速度はためしにということで、最高速の8倍速を選択しました。4倍速であれば、現在のスペックで十分なのですが、8倍速となると、少々荷が重いような気がしました。それでも、Just Link が機能すれば、8倍速であっても問題ないはずなので、この機能を試してみることにしました。

justlink.jpg

 書き込みに必要な時間は、iso イメージができていることもあり、おおよそ10分程度(74分÷8=9.25分)だろうと考えていましたが、実際にはもう少しかかりました。

 焼きおわったところで、結果レポートが表示されました。その回数を見て、私はびっくりしました。予想をはるかに上まわる転送エラーの発生頻度で、8倍速の Write を本気で使う場合には、USB 1.1 では帯域不足になることが、良くわかりました。この後、何度か焼いてみたのですが、これまでの最高回数は、451回でした。

 Just Link が機能した場合の CD-R および CD-DA については、いずれも問題ありませんでした。これまでびくびくしながら焼いていた CD-R ですが、あまりおそれなくても焼けるようになり、かなり重宝することがわかりました。

 


 Just Link および Burn Proof という技術は、これから先を考えると、どうしても必要な技術と言えます。特に、高速化が進めば進むほど、流さなければならないデータ量は増えていき、結果としてバッファアンダーランエラーの発生頻度が高くなります。伝送路であるバスの転送速度は、自ずと限界が有ります。ある程度までは耐えられるでしょうが、いつまでもぞ化できるわけではありません。こういった問題を Just Link や Burn Proof といった技術がカバーすることで、高速化というテクノロジーがいかされていくといえます。おそらく DVD-R や DVD+RW などといった大容量光デバイスには、これらの機能が当たり前のように搭載されていくでしょう。そして、これらの技術は何ら特殊なことではなく、当たり前の技術として、取り込まれていくのでしょうね。 


 Last Update is 2001/11/18