ThinkPad 760E の復活

〜緑内障の治療経過について〜


LCD ユニットを求めて

 失明中の ThinkPad 760E がかわいそうなので、さっそく Yahoo オークションで LCD の出品がないか、探してみることにしました。ところが、ThinkPad 760E そのものの出品はあるのですが、LCD ユニットの出品がほとんどありません。そこで、枠を広げて、 eBay まで探しにいきました。IBM は World Wide な商品として販売しているため、国内では見つからないような、 core なアイテムも、かなりの数が出品されています。そういえば、ThinkPad 600 の upgrade CPU を購入したのも、ここ eBay でした。

 LCD 交換したことのある方はわかりますが、単体でも結構な値段がするため、いかに eBay といえど、それど多くはないだろう、と考えていました。もちろん、出せる価格もある程度決まっていますので、折り合いがつかなければ、どうにもなりません。しかし出品されていなければ、それらの検討そのものが無効になるため、まずは出品があるのかどうかを探すことにしました。

 eBay の場合、注意しなければならないのは、デフォルトの設定で検索すると、現在いる国に限定して検索されてしまいます。このため、面倒ではありますが、オプション設定を開いて、検索対象を「入手可能な国」とし、入札の通貨を「すべての通貨」と変更します。こうすることで、東はアメリカから、西はドイツまで、全世界を検索することができます。私がこれまで購入したことのあるものは、すべてアメリカ本国ですが、検索には、ドイツマルクのものが含まれることは珍しくはないですね。

 さすがに eBay は違いました。760E 用の LCD ユニットが数点出品されており、私はさっそく入札をしようと思いましたが、ちょっとひっかかることがありました。それは、LCD ユニットの表示可能な解像度が 11024x768 ではなく 800x600 となっているものが含まれていたことでした。ThinkPad 760E はすべて 1024x768 と考えていた私は、驚きました。そこで、IBM の Web サイトから、760 の保守マニュアルを入手し、LCD ユニットの FRU を調べることにしました。この FRU というのは、構成するユニットに付けられた IBM の固有番号であり、部品センターへ発注する際にも使用されるものであり、確実にそのユニットが何であるか、を示しているものです。また、保守マニュアルというのは、ThinkPad をメンテナンスする際に使用されるもので、通常は保守担当者しか、見ることができないものですが、IBM は以前から有償配布していました。ここ数年の間に、Web 上の pdf 形式で置かれているようになったため、IBM のトップページで検索すると、意外と簡単に見つけることができます。ThinkPad 600 の CPU 交換などは、この保守マニュアルなくしては、作業することができませんでした。

 760E の保守マニュアルは、単体ではなく、760 シリーズの保守マニュアルとなっているため、分類が 760X となっていました。最初 760E が見つけられなかったため、存在しないのかと思ったのですが、ためしに落とした 760X が実は大当たりでした。保守マニュアルを見て、私は驚きました。というのも、760E でも、SVGA 液晶の搭載されたモデルがあり、その他に XGA 液晶が搭載されているモデルがある、という記載を見つけたからです。出品されていた LCD ユニットは、FRU より、SVGA 対応のものであることがわかり、私が必要としていたものではありませんでした。がっくりと方を落としたことは、いうまでもありません。

 SVGA だって良いじゃないか、と言われる方もいらっしゃるでしょう。たしかに、うつらないよりはマシです。しかし、アメリカから取り寄せるとなると、その送料だけで、4,000円近くになります。となれば、無理してアメリカから買付をしなくても、Yahoo オークションなどの国内で入手できるものとしておいたほうが、より安く済むことになります。私は eBay での入手を諦めることにしました。

 再度国内の Yahoo オークションに目を向けてみたところ、完動品の ThinkPad 760E が何点か出品されていることがわかりました。一台めの ThinkPad 760E に投資した 10,000円は無駄になりますが、ここまでくれば、どうしても動作する ThinkPad 760E を見てみたい、と思うようになり、その内の一点に入札をしたところ、運良く、落札することができました。

LCD ユニットの組み替え

 さて、落札はしたものの、最初に入手した ThinkPad 760E の扱いをどうしようか、ということになり、私は一つの決断をしました。それは、ThinkPad 760EL からの液晶の移植です。もともと、760 系共通のパーツを使っていることもあり、そう移植にかかる手間はないだろう、というのが、思い立ったきっかけです。実のところ、ThinkPad 760EL については、本体の PCMCIA スロットが使用不能(上段:認識不良、下段:ピン折れ曲がり)となっており、自宅内 LAN に参加することもままならなくなっていたため、使用することが難しくなっていました。その後、拡張ポートリプリケータを入手することに成功したため、PC カード自体は使用可能にはなりましたが、無線 LAN PC カードについては、3.3V 仕様のため、Cardbus 必須となっており、標準 PCMCIA の拡張ポートリプリケータでは使用できないのです。これらもあり、ThinkPad 760E を活かして、ThinkPad 760EL を隠居させることにしたのでした。

 液晶ユニットの取り外しは、それほど難しいことではありません。というか、保守マニュアルを見れば、どのネジを外して行うのか、一目瞭然です。しかし、私は保守マニュアルを見ずに作業をはじめました。というのも、かつて ThinkPad 760EL をばらしているため、どこのネジを外せばよいか、ある程度わかっていたためです。また、過去に ThinkPad 560FJE 、ThinkPad 360C 、ThinkPad 560E 、ThinkPad 600 、と数台の ThinkPad をばらした経験もあるので、あまり不安はありませんでした。

 ThinkPad 760EL の液晶ユニットは、8本のネジで固定されています。うち6本については明らかな場所にありますが、残り2本は隠されています。そこで最初にこのネジを外します。キーボード上部に4箇所ほど、シールらしきものが付いている箇所があります。これはキーボードを止めているベゼルですが、この下に外すべきネジがあります。そこで千枚通しなどの先が細くなっている道具を使って、この隠し蓋となっているシールを外します。なお、このシールは、後で再利用するため、飛ばさないように注意してとりはずしてください。なくしてしまったからといって、動作上は問題ありませんが、見栄えが悪くなります。

 シールがはずれると、ネジ頭が四つほど見つけられます。なお、ネジの長さおよびネジ頭の形状が、装着する場所によって異なるので、注意してください。頭が水平な皿ネジと丸くなっている丸ネジの二種類があります。ネジを四本外すと、ベゼルがはずれて、キーボードを取り外せるようになります。

 ベゼルがはずれると、LCD ユニットのヒンジから帯びている固定具に締めつけられている固定ネジが2本見えてきます。このネジがこれまで見えなかったネジです。すでに外している4本のネジと混ぜないように、注意してください。この2本垂直方向のネジ+4本の水平方向のネジであわせて6本のネジを使って、LCD ユニットを支えています。

 次に水平方向の支えネジを外します。ThinkPad 760EL を前後逆にして、背面を手前にもってきます。そうすると、両端に上下2本、中央部に2本、あわせて6本のネジがありますので、これらをすべて外します。なお、ネジの数が減るほど、LCD が不安定になりますので、LCD の重量をうまく逃がしながら作業する必要があります。液晶パネルを向こう側に180度倒してしまって、上下逆にした方が、外しやすいかもしれません。また、中央のネジは、耐荷重量がほとんどないため、先に外しておかないと、ネジを傷めてしまう危険性があります。この中央部分は、液晶と本体をつなぐフラットケーブルを支えているものです。

 ここまでこればあとはわずかです。ネジをすべて外すと、LCD は自重によって不安定になります。最後に本体から伸びている黒いケーブルとフレキシブルケーブルを外すと、液晶と本体が分離します。フレキシブルケーブルは、渋い場合は千枚通しなどの先の尖った道具を使うと、外しやすくなります。黒いケーブルは、外装をラジオペンチなどで抑え、千枚通しなどを使うと、外しやすいです。このケーブルは、液晶の輝度調整用ボリュームへつながっているので、切ってしまうと、輝度調整ができなくなります。外すときに慎重に作業を行うと、すぐに気づくはずです。

 同じように ThinkPad 760E 側もばらします。手順と注意点は同様です。ただ。作業中に何か違和感を覚えたのですが、何に対してだったのかはこのとき気づきませんでした。

 ThinkPad 760EL から外した LCD ユニットをThinkPad 760E へ借留し、一度テストをすることにしました。ネジを完全に締めてしまってから、LCD が使えないとなると、再び作業を行わなくてはなりません。それでは悲しいので、カリ止めして、動作テストをし、これがクリアできたところで、本留することとしたのです。借留めして、ThinkPad 760E に通電したところ、予想通り、LCD は通電され、きちんと起動画面を確認することができました。たしかに互換性はあるようです。

 ここで、ふとしたことを思いつきました。なんとなく、ThinkPad 760E の液晶をもう一度載せてみたくなったのです。理由はありません。外す際に、フラットケーブルのコネクタは押してみて、反力があることは確認していたのですが、(ここで映ったらお笑いだよな)などと、まるで魔がさしたかのような感触に陥りました。

 元の LCD に戻し、再度通電をしてみたところ、私は笑うことができませんでした。否、驚いてしまいました。それまで全く何も映し出さなかった LCD が、突然起動画面を移しているではありませんか!(@_@)となったのはいうまでもありません。そのまま Windows まで完全に起動させたところ、たしかに 800x600 の表示状態となっており、まわりに黒いスペースが表示されているではありませんか!

(ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

 奇跡というのは言い過ぎでしょうが、全く驚きました。外す時点では、刺さっていることを確認していたつもりでしたが、実はすでにはずれていて、コネクタがずれていたため、押してみても反力を感じたのではないか、今振り替えるとそう思われます。その後、すべてのネジ留めを行い、再度通電しましたが、さきほどと同様に、きちんとLCD が表示されています。つまり、LCD が故障していたのではなく、なんらかの理由で、フラットケーブルがはずれていたのでした。

蘇生した ThinkPad 760E

 たった 10,000円で購入した Junk な ThinkPad 760E ですが、このようにして、再び完動するようになりました。結局、部材を ThinkPad 760E に譲った ThinkPad 760EL は隠居生活の身となってしまいましたが、今後、オークション等で底値を見極め、揃えていきたいと考えています。幸か不幸か、ThinkPad 760 シリーズに使われている台形4ピン AC アダプタに関しては ThinkPad 360C 付属、ThinkPad 760EL に付属、オークションでブッキングした2個、と台数分以上にそろっているため、問題はありません。ただ、一つだけ気がかりがあります。それは

 新たに落札した ThinkPad 760E をどうしよう?

ということだけです(^_^;;


Last Updated 2002/02/16. Copyright Tazoe Kazuya . All rights Reserved 2002