王様と私

(ThinkPad 760EL の取得)


 ThinkPad 701Cs を Yahoo オークションで入手してから、私は定期的にオークションを漁るようになりました。とはいえ、さほど資金もありませんので、よほど安価でな限り、購入できないのですが(苦笑)。私の中では、落札額が2万円以下のものに興味が沸くのですが、そんなに安価なマシンはまれにしかありません。もちろん、完全品などはほとんど望めず、どこかかしか壊れていたりしたりすることがほとんどです。

 そんな中に ThinkPad 760EL がありました。7シリーズといえば、IBM がフラッグシップとして生産していたマシンであり、その当時 IBM が持てる技術をすべて注ぎ込んで作ったものです。当然定価ベースでも 100 万円に達しようとするほどであり、再度の旗艦となった 770 は定価ベースで 100万円を超えていました。760EL のスペックは、CPU:Pentium 133MHz(二次キャッシュなし) HDD:1GB Mem:16MB CardBus 2基搭載 800x600x 26万色表示 と ThinkPad 560 とさほど変わるところのないスペックでした。しかし、フラッグシップを勤めたマシンが、それだけで終わるわけがありません。760EL の特徴的な部分は、チルトアップするキーボードです。3シリーズなどでは、本体下面にマシンを持ち上げる足があります。足を立てると、本体が傾きますので、その結果、キーボードに傾斜がつき、タイピングしやすくなります。

 しかし、本体へ傾斜をつけることには、問題がありました。それは CD-ROM です。設置場所の関係から、CD-ROM ドライブは前面排出をとなりました。しかし、本体に傾斜を付けると、排出された CD-ROM ドライブのトレイが机に引っかかってしまうのです。CD-ROM ドライブは使いたいが、足を立てれば排出できない、そこで、IBM は大胆な方法を考えついたのです。それは、本体を持ち上げずに、キーボードに傾斜をつける、ということでした。たしかに、キーボードのみを傾斜させることができれば、一番良いわけですが、傾斜を付けることで、キーボードがしなってはいけないわけですから、キーボード自体の剛性も必要となってきます。760 はこの難しい課題に挑んだ、一つの解であるといえます。

 さて、今回入手した ThinkPad 760EL は、ジャンク扱いとなっていることもあり、いくつかのアイテムが必要となりました。中でも HDD パックと電源ケーブルは、ThinkPad 760EL を実用できるかどうか確認する意味でも、重要な部分となっています。実を言えば、電源ケーブルについては大誤算がありました。私は当初、560 などと同様の樽型タイプだと思いこんでいたのですが、実際には 360C と同様の台形コネクタとなっていました。手持ちの 360C の AC アダプタもかなりの傷みがあり、いつまで使えるかは疑問が残るところではありましたが、755C に続き 760 も台形コネクタとなると、本腰を入れて探す必要があります。IBM ではすでに生産完了品となっており、入手はかなり困難な様子でした。

 新品の AC アダプタの購入は難しい以上、中古で探すしかありませんでした。そこで、私は再び Yahoo オークションで探してみることにしました。これまではあまり意識していなかったせいか、あまり気づきませんでしたが、結構な数の出品があることがわかりました。755C のアダプタも必要となっていることから、複数の出品に入札してみました。さすがに Pentium クラスの ThinkPad は、買い替え対象となっているためでしょう、応札する相手もほとんどなく、あっさり両者とも落札してしまいました。755C と 760EL を同時に使うことは、現時点ではないため、一つあればよかったのですが、これまでの経験上予備も必要、と判断し、そのまま購入することにしました。液晶の割れた 360C を退役させ、別途 370 もしくは 755C を追加購入する場合なども、ありえるという判断がありました。

 AC アダプタは工面できたのですが、HDD パックについては、さすがに出品はありませんでした。しかし、これがないと 760EL を起動させることもできないため、なんとか探す必要があります。そこで、私はもう一つのオークションである eBay オークションを探してみることにしました。この eBay は以前 ThinkPad 600 用の CPU モジュールを見つけたところでもあり、いろいろと興味深いアイテムが出品されている、宝の山でもあります。さっそく 「日本から入札可能なアイテム」で「ThinkPad」を検索してみました。さすがに IBM の本家もあるだけあります。さほど苦労することなく、HDD パックは見つかりました。中身となる HDD 自体はないようですが、こちらは手持ちがあるため、ケースさえあれば十分なため、さっそく入札しました。さすがに空のケースは人気がないようで、一発で決まりました。

 HDD パックを落札できたので、さっそく支払いをすませ、物が届くのを待つことにしました。以前の CPU 購入の時でも、支払いから一週間程度で到着していましたので、今回もそのくらいで到着するだろうと考えていました。しかし、一週間が十日になっても、物が届く気配がありませんでした。一抹の不安を感じながらも、海外輸送が入っていることを考慮し、もう少し待ってみようと考えました。しかし、760EL の動作確認がいつまでもできない状態にしびれを切らした私は、ある一つの方法をとることにしました。

 いくつか情報を集めたところ、760 と 755 では、HDD パック自体は異なるものの、コネクタは互換性がありそうな雰囲気がありました。そこで、755C のHDD パックをばらし、接続ケーブルだけを取り出してみました。このケーブルに HDD を接続したところ、物理的には差し込み可能となっていました。あとは実配線がどうなっているか、が問題となります。そこで、思い切って、差し込んでみたところ、無事 HDD が認識されました。運が悪いと、HDD が飛ぶ危険性もありますので、良い子は真似をしないように(苦笑)

 そんなことをしているうちに、海外オークションで落札した HDD パックが届きました。送付連絡の Mail には、たしかに shipped とは書いてありましたが、まさか船便になるとは、考えていませんでした(苦笑)。受領した HDD パックは、確かに ThinkPad 360C/755C とは異なり、スリムケースになっていました。おそらく、対象 HDD を 17mm から 12.7mm へ変更したことも、理由の一つにはあると思われます。ただ、コネクタ部分については、ThinkPad 360C/755C と同一であったので、収納スペースの理由から、HDD パックの形状を変更した可能性は否定できません。もちろん、この HDD パックに HDD は納めています。

 さて、このように苦労して稼動環境まで作った ThinkPad 760EL ですが、現在のところ、特別何に使うという目的がはっきりとは定まっておりません。とりあえず Vine Linux 2.0 の環境はできているので、今後は Linux の勉強に使うことになろうかと思いますが、キータッチの固さが難点で、正直閑職についている状態です。


 Last Update : 2001/01/04 . Copyright Tazoe Kazuya .