強化武装装着

CD-ROM ドライブの搭載


 最近の PC では、当たり前に装着されている CD-ROM ドライブですが、ごく最近までは外付けするのが一般的でした。サイズに制限のある NotePC においては、なおさらのことでした。このころは 、NotePC で CD-ROM ドライブを利用するためには、PC カード接続の CD-ROM ドライブを使用するかパラレルポート接続の CD-ROM ドライブを使用するかしかなく、Windows の配布メディアが CD-ROM になるとともに問題となってきました。特に PC カード接続では、最初に PC カードを利用可能にするための設定、さらに CD-ROM のドライバの設定、そしてこれら大量のドライバによるコンベンショナルメモリの圧迫、という三重苦をユーザーが背負わなければならないため、値を上げるユーザーも少なくありませんでした。OS がインストールされてしまえば、相当軽減されるのですが、導入処理そのものでは、面倒な手順が残ってしまっていました。

 そもそも CD-ROM ドライブの出はじめは、今のような汎用的なインターフェイスではなく、サウンドカードの同時拡張コネクタであったため、ドライブごとにコネクタが異なっていました。サウンドカードの代表格である Sound Blaster 16 では、Creative コネクタの他に MITUMI コネクタと SONY コネクタを持つものがあり、搭載されているコネクタによって、使用できる CD-ROM ドライブが決定されていました。コネクタの物理形状は似たようなものが多かったのですが、中を通している信号の扱いが異なるため、誤って装着すると、CD-ROM ドライブ自体を使用不可能にしてしまう危険性さえありました。

 CD-ROM によるアプリケーションの配布が一般的になり始めると、サウンドカード経由だけでなく、SCSI タイプの CD-ROM ドライブが普及し始めました。とくに映像媒体としての CD-ROM の場合、滑らかな映像再現のためには、SCSI タイプの CD-ROM ドライブが好まれるようになりました。また SCSI の方が高速ドライブが用意されており、速度重視のユーザーには受け入れやすかったのかもしれません。

しかし SCSI の隆盛はそうつづきませんでした。ついに ATAPI のCD-ROM ドライブが登場しました。ATAPI ということで、標準搭載の IDE インターフェイスを使えるため、追加投資が不要でした(SCSI は I/F の増設が必要)。しかし、ATAPI がすぐに普及したかというと、そうではありませんでした。

 当時の OS は Windows 95 でした。ちょうど、このあたりから CD-ROM での OS 提供が当たり前になりつつありました。現在でこそ、CD-ROM から起動させてインストールができますが、当時はまずCD-ROM ドライブを使えるようにすることからはじめる必要があったのです。しかも CD-ROM ドライブが変われば、使うドライバも異なります。SCSI の場合は、SCSI I/F 側で対応しているため、ドライブが変わっても変更が不要なのですが、ATAPI はドライブごとにドライバが異なっていました。このため、SCSI I/F さえ同じであれば、共通で使える SCSI タイプがもてはやされていました。

 流れが変わり始めたのは、Windows 98 が登場してからでした。OS に ATAPI の汎用 CD-ROM ドライバが含まれて、SCSI 同様の共通ディスクが作成できるようになり、ATAPI CD-ROM ドライブが一気に普及することになりました。また、このころから CD-ROM からの起動がサポートされ始め、次第に起動ディスク問題が解消されてきていきました。

 実のところ、CD-ROM ドライブを内蔵させる最大の理由は、この CD Boot でインストールを簡単にするためでした。まさか、ここに落とし穴があるとは、夢にも思っていませんでした。

 CD-ROM ドライブの調達については、今回も eBay を利用することにしました。eBay は日本国内では入手できないようなアイテムがいろいろと出品されています。これまで何度か見ていた中でも、CD-ROM ドライブ単体の出品があることがわかっていました。さっそく eBay を探してみたところ、8倍速と 20倍速の二種類の出品がありました。20倍速の法がインストールには都合がよいでしょうが、値段も若干上がってしまいます。今回搭載する TP760EL では、CD-ROM ドライブはインストールの時さえ使えればよく、速度はあまり気にしていないため、安価な 8倍速を購入しました。

 Note 用内蔵 CD-ROM ドライブという特殊なアイテムは、純正以外には存在しないと思っていました。汎用性のあるデスクトップ PC と異なり、Note PC の場合はコネクタの独自性などもあり、また特定の機種専用となることから、サードパーティが成立しにくいためです。しかし、さすがに PC をボールペン同様に使うお国柄だけあります。スケールメリットが確保できるだけの販売量があるため、NotePC 用のさまざまな内蔵型デバイスが販売されています。今回の CD-ROM ドライブもそういったもののひとつでした。

 最大の懸念事項であった CD-ROM ドライブが入手でき、さっそく TP760EL に内蔵させました。内蔵させるにあたってはバッテリが渋く、若干手間がかかりましたが、なんとかはずすことができました。FDD を取り外し、代わりに CD-ROM ドライブをセットすれば完了です。弁当箱スタイルの ThinkPad は内蔵デバイスの取り扱いが非常に楽ですね。

 さて、CD-ROM ドライブが内蔵できたところで、さっそく Windows をインストールしてみることにしました。稼動中の Windows を別のマシンにつけていたためか、どうにも動作がおかしいのです。このために CD-ROM ドライブが必要であった、というのが本当の理由でもありました。

 Windows の起動可能なメディアを CD-ROM ドライブにセットし、TP760EL の電源を投入してみたところ、なぜか No System を示すエラーメッセージが返ってきました。(あれっ、なんで?ああそうか、起動順番の変更をしていなかったな)。うっかりして、そのままの起動順で立ち上げてしまい、CD-ROM ドライブが見つけられなかったようです。さっそく Easy Setup を起動し、起動順を変更しましたが、状況は変わりません。使っている CD-ROM が悪いのかと思い、TP600 にいれてみたところ、こちらでは問題なく起動します。何度か試してみましたが、結果は変わりませんでした。

 Easy Setup の起動順設定に CD-ROM があったので、まさかとは思いましたが、どうやらこの CD-ROM ドライブは CD boot ができないようです。誤算はさらに続きます。なんと、期待していた TP600 の FDD が、TP760EL に接続できないのです。コネクタが合わないのです。FDD と CD-ROM ドライブが同時使用できない、CD boot は不可、とかなり悲しい結果となりました。結局、HDD を起動可能にし、CD-ROM ドライバを組み込んで、インストールをする羽目になりました。この落とし穴はとても深く、弾みで私はブラジルへついてしまったくらいです(爆笑)。

 教訓:事前準備は十分に!


 Last Update 2001/02/04