Vine Linux 2.5 の導入

Vine はここまで進化した


VineLinux 2.5 の入手

 Vine Linux に限ったことではありませんが、Linux のディストリビューションでは、公開 ftp サーバーによる配布がなされていることがあります。これは、Linux そのもので対価を得ることを目的とした商業販売ができないためです。現在、多くのディストリビューションがベースとしている RedHat Linux も、自社の公開 ftp サーバー等で、一般配布を行っていますし、もちろん Vine Linux も一般配布を行っています。

 公開 ftp サーバーからダウンロードできる、とはいっても、そのサイズは半端なものではありません。インストールの手間を考えると、インストール用 CD を作成することが望ましいわけですが、CD に焼きつけるイメージファイルは、CD-ROM の容量と同じですから、650MB という巨大なデータ量になります。RedHat Linux や debian などでは、さらに複数の CD-ROM を作成する必要がありますので、なおさら落とさなければならないデータ量は増加します。

 そんな私には強い味方があります。こんなときこそ ADSL のメリットを心置きなく体感できます。我が家のADSL 環境は計測結果で 1.3Mbps と、ADSL 1.5M 帯としては非常に好成績をあげています。このため、650MB というデータ量であっても、ダウンロードに必要な時間はわずか1時間ちょっと、となります。ダイアルアップ接続ではめげてしまうような量ですが、ADSL にしてみればさほど大きくはないといえます。さっそくダウンロードを開始しました。

 私が Vine Linux 2.5 のリリースをしったのが 4/16 で、公開は 4/15 、セカンダリとなっている jaist の FTP サーバーに転送が行われたのが 4/12 あたりのようです(タイムスタンプによる)。Vine Linux は、まずセカンダリの Top を努める JAIST の FTP サーバーに転送され、その後残る二つの FTP サーバーに転送され、最後に各ミラーサーバーに転送されるという処理になっており、一般ユーザーはミラーサーバーから落とすようにアナウンスがされています。しかし、注目度が高いために、セカンダリの筆頭を努めている JAIST への負荷が高すぎて、ミラーサーバーはもちろん、セカンダリを受け持っている JAIST 以外のサーバーでさえ、ミラーが終わっていないのです。

 ミラーはもちろん、セカンダリも使えないことから、方法は二つに絞られました。一つは JAIST から直接入手する方法であり、もう一つは日を改めてセカンダリやミラーサーバーが処理を完了することを待つということです。本来であれば、後者を取るべきなのです。前者を行うユーザーが多すぎるが故、本来は十分な帯域をもつセカンダリ==プライマリ間のデータ送受信に遅延が発生してしまっているのですから。しかし、私は前者を取ってしまいました。理由は簡単なものです。たまたま、JAIST の FTP サーバーにアクセスしたら、入れてしまったため、というものです(爆)。

 ダウンロードは、予想以上に時間がかかりました。やはりかなりのユーザーがアクセスしているようで、転送率は 50KB/S 程度まで落ち込んでいました。それでも2時間ちょっとでダウンロードは完了しました。出来たファイルを CD-R に焼きつけてしまえば、インストール CD は完成です。CD-R の作成はものの15分程度で完了しました。

FDless インストール again

 いろいろと苦労して落とした Vine Linux 2.5 ですが、落とした以上は動作させたいのが人情です。当然の如く ThinkPad 760E に導入してみることにしました。これには一つの理由がありました。それは、Vine Linux 2.5 でも FD less インストールに失敗するのか、という点でした。本当に使えないのであれば、バグ報告をする必要がありますし、そうでなければ、こちらの環境の問題であるかもしれませんので、いずれにせよ確認が必要です。

 FD less インストールを行うために、CD-ROM ドライブを MS-DOS から認識させる必要があるわけですが、これについても、前回を同じ方法をとりました。つまり Windows 上で CD-ROM ドライブが使える事から、Windows 上でFDless インストールに必要なファイルを HDD 上にコピーして、HDD から起動させる方法を取る、ということです。この方法は、FDD と CD-ROM ドライブが同時に使えない機種には、とても有効です。 

 それではインストーラを起動してみましょう。英語環境に切り替え(chev us)し、Loadlin コマンドで Linux カーネルを起動します(loadlin vmlinuz initrd=normal.img )。すると、Vine Linux 2.1.5 であれほど苦しんだ kernel panic は発生せず、するすると起動してきました。ここでうっかり text オプションを指定していないことに気づきました。Trident Cyber 搭載 PC では、GUI ベースの anaconda が動作せず、text オプションを指定する必要があるのですが、なんと anaconda がするすると X Window System を起動指せるではありませんか。これには心底驚かされました。

 GUI な anaconda が起動してしまえば、後は画面の指示に従うだけでインストールがすいすいと進みました。/ にする /dev/hda3 には、すでに Vine Linux 2.1.5 が導入されてはいましたが、きれいさっぱりとフォーマットすることにしました。HDD の容量も少ないのですが、どうせならすっきりと Vine Linux 2.5 を導入したい、と考えたからです。

 インストールに当たって、ひっかかったところといえば、やはり X Window System でした。VRAM が2048KB あるはずなのですが、これを指定しても、X のテスト起動に失敗してしまい、うまくありません。しょうがないので、X の設定をスキップし、後から設定を行うことにしました。インストール完了後 Xconfigrator で設定したところ、1024x768x16bit Color で起動しました。

VineLinux 2.5 使用感

 Vine Linux 2.1.5 と比較すると、見た目はだいぶ変わった感触を受けます。特にウインドウマネージャに WindowMaker ではなく、GNOME+Sawfish がデフォルトになったところなど、見た目を気にするようになったのかな、と感じさせるものがあります。とはいえ、Pentium 150MHz には、多少荷が重いところもあり、起動には多少の待ち時間が必要ですが、一度あげてしまえば、使う上ではそれほど遅くは感じないですね。このあたりは、Project Vine の力量が散見できるところなのかもしれません。

 Trident Cyber でいつも問題にある kon ですが、Vine Linux 2.5 では、Cyber 対応済みのものが導入されているようです。このため、そのまま kon を実行しても、問題なく日本語表示可になります。以前は Cyber 対応の kon に入れ換えないといけなかったので、これは非常に助かります。

 さて、良いことばかりが続けばうれしいのですが、残念ながらそうとばかりもいっていられません。致命的な障害としては、サウンドが全滅、かつ、再設定できない、というものがあります。すべて Vine Linux 側の対応だけということではありませんが、現状の障害として、kernel 2.4 系では sndconfig が使用できないという問題があります。これは以前 HOLON Linux でも発生していた障害ですが、その後対応パッケージにより修正されています。Project Vine でも、この不具合はすでに承知しており、修正パッケージを作成中となっています。

 しかし、問題はそれだけではありませんでした。ThinkPad 760E には、悪名高い Mwave が搭載されています。この Mwave とは、一つの DSP(Digital Signal Processor) を使って、サウンド機能とモデム機能を提供しようというもので、IBM では ThinkPad だけでなく、Aptiva などにも採用されていました。しかし、モデムとサウンドという二つの機能を実現するために、IRQ を四つも使うため、他のカードを併用することが困難になるというものでした。さらに、DSP の実力のせいなのでしょうか、28.8kbps のモデム機能を実行中にはサウンド再生が不可となるため、あまり評判は良くありませんでした。事実、Aptiva では、わざわざ Mwave を外して、SB16 とモデムカードを装着して IRQ を節約する方法が好まれ、その後 Mwave は急速に廃れていきました。

 Mwave のサウンド機能を Linux から使う場合、一度 MS-DOS で Mwave を初期化しなくてはなりません。このため、MS-DOS を起動し、Mwave を初期化し、Loadlin で Linux を起動する、という手数を踏んで、ようやく SoundBlaster Pro 互換の音源として使用できるようになります。このため、設定を行うためだけにも MS-DOS を起動させ、さらには Loadlin で kernel 2.2 を呼び出して起動して、sndconfig で設定を行うことが必要になるわけです。しかし、Loadlin で kernel 2.2 を呼び出すと、どうしても正常に起動できないため、この方法も使えないことになります。つまり、現状では、サウンド機能が使用できない、ということになります。

 音がでないことを除けば、Vine Linux はおおむね満足できる状態に仕上がっていると感じられました。かつて Vine Linux 0.9βで玉砕したことを、ようやく克服したように感じます。


Last Updated 2002/04/20. Copyright Tazoe Kazuya . All rights Reserved 2002