Vine Linux では、標準の IM(Input Method) として NEC が開発した canna が搭載されています。UNIX の世界では、ある程度名前の売れている IM ですが、Windows が長い私にとっては、ちょっと使いにくいかな、と感じていました。なにせ、Windows でも ATOK 配列を使う、アンチ ATOK ユーザーというよくわからない生態(爆笑)なので、できれば canna も ATOK 配列が設定できればなあ、と考えていました。
私はまったく知らなかったのですが、canna には、キー定義ファイルが用意されており、その中には ATOK に似た設定ファイルもあるのだそうです。これを使えるようにすれば、ATOKもどきになりそうです。個人的には、変換のキーアクションは
脊髄反射で使うもの
と考えているので、いちいちどのキーを押すか考えたくない、というところだったりします。
canna に限らず、Linux では設定ファイルが . (ドット)で始まるものが数多くあります。これらドットファイルを読み切れることが、Linux を自分流にカスタマイズするための最短の道のりになります。canna の設定ファイルは、.canna という名前でユーザーのホームディレクトリに存在しています。このドットファイルは、ls のデフォルトの対象から外されてるため、確認するためには、ls に -a オプションを付けます。ls -a を実行すると、数多くのドットファイルが存在することがわかります。
ここで、.canna の書式を説明します、といいたいところですが、それはできません、なぜなら、私が使用している .canna は自前で用意したわけではなく、TLUC のメンバーである 青嶋 和紀氏より頂いたものだからです。canna に付属する ATOK キー定義に、さらに手を加えてより ATOK 定義に近づけたものでした。
この atok.canna をホームディレクトリに .canna の名前で複写することで、カスタマイズは完了です。特に、ファンクションキーで変換できるのは、ATOK 上がりには、非常に便利です。ホームポジションから手が離れるのではありますが、これを当たり前のこととして使用してきた身には、むしろ自然にさえ感じられます。
Linux 上のブラウザとしては、Netscape Navigater が使われていました。しかし、Netscape 社が業務に行き詰まり、AOL に吸収され、その結果としてオープンソースとしての Mozilla プロジェクトが立ち上がりました。現在では Mozilla のコードをベースに、一部を修正したものが Netscape Navigater としてリリースされています。
Netscape Navigater は、各種プラットフォームにリリースしていたことが有名ですが、Mozilla も各種プラットフォームへリリースしています。これは、OS が異なっても共通に使用できるため、各種 OS を使用しているユーザーには非常に重宝します。
Vine Linux 2.5 では、ブラウザとして、それまでの Netscape Navigater から、Mozilla へ変更されています。しかもこのバージョンは 0.9.8+ という Nightly Build を使っています。Mozilla の Nightly Build とは、公式リリースと異なり、β扱いの最新コンパイル版を指しています。この Nightly Build は公式リリースではないのですが、その時点で最新のソースをコンパイルしたものとなっていますので、いろいろな新機能が含まれていることがあるのですが、反面、バグテストが十分に行われているとは言いがたいものがあるため、 at Your Own Risk となっています。このため、ディストリビューションとして収録する場合は、使われないものでした。しかし、Vine Linux では、あえてこの Nightly Build を収録してきていたことに驚きました。
しかし、いくら Mozilla 0.9.8+ がその当時新しかったとしても、すでに Mozilla 1.0 正式版がリリースされており、セキュリティ的にも 1.0 RC 以前は問題があると言われているため、すぐにでもバージョンアップが必要となっていました。しかし、Vine Linux 2.5 の Update には、なかなか 1.0 があがってきませんでした。
待っていれば、おそらく 1.x の Mozilla が Vine Plus か updates に上がってきたと思いますが、茨の道を歩くことも、たまには刺激になってよいかもしれません(爆)。ということで、Mozilla.org が配布している rpm パッケージを使って、Mozilla 1.0 の導入を行うこととしました。rpm パッケージである以上、Mozilla.org のものでも、問題なく動作するだろう、と非常に甘い考えしか、この時はもっていませんでした。
本体の rpm と、念のため開発環境の rpm をダウンロードしました。ここで一つ引っかかることがありました。それは Mozilla.org で配布されている Mozilla の RPM は、TrueType のサポートがない、と明記されていることです。Windows 環境からの移行ユーザーがもっとも問題にすることが、Linux ではフォントが汚い、ということなのですが、これを解決するための TrueType フォントが使用できないのでは、本末転倒になってしまいます。とはいえ、自前でコンパイルするほどの技量はないので、とりあえずこのパッケージを導入することとしました。
しかし、世の中そんなに甘くはありませんでした。Mozilla のアップデートはすさまじい困難となりました。Mozilla は、本体だけでなく、5本ほどの RPM で構成されているため、これらすべてを同時にアップデートする必要があります。しかし、コマンドで一括アップグレードする方法を知らなかったため、すべて依存関係のエラーでアップデートに失敗してしまいました。さらには、個々のパッケージの除去もうまくいかず、にっちもさっちも行かなくなってしまいました。
思い余った私は、日本語環境の強制除去を敢行しました。--force オプションを使うことで、依存関係を無視して、強制除去ができることは知ってましたので、とりあえず日本語化パッケージさえ除去してしまえば、Mozilla 本体のアップデートはうまく行くのではないか、と考えたのです。ところが、これが致命傷となりました。
日本語化パックを外して、再び Mozilla のアップデートを行ったところ、またもや依存環境が障害となり、エラーが発生しました。本体を除去した訳ではなく、しかも日本パックを強制除去したわけですから、RPM のデータベースが更新されるはずがありません。らちが明かなくなった私は、やむを得ず、日本語パックを再インストールすることにしました。しかし、すでにインストールされている、というメッセージが表示され、再インストールもできなくなってしまったのでした。
ブラウザが動作しない、ということは、マニュアルさえ読めない、ということを意味します。まして、このマシンには Mozilla 以外のブラウザは導入していないため、まさしく手も足も出ない状態となりました。私の顔が蒼ざめたことは言うまでもありません。
事ここに至っては、再インストール以外の対応方法を私は思いつくことができませんでした。ただ、どうせ再インストールするなら、駄目もとでもう一つだけテストしてみよう、と考えました。それは、すべての Mozilla パッケージを除去した上で、tarball の Mozilla を導入する、ということでした。tarball であれば、依存関係の問題もなく、強制的に動作可能な Mozilla を導入することができます。反面、パッケージの除去を手動で行うことが必要になり、システムの保守を難しくしてしまう危険性を意味していることから、私はこれを避ける方向で考えていました。しかし、RPM の依存性データベースが壊れ、RPM でのインストールは事実上困難であることから、最後の手段として考えていたことを実行しよう、となったのです。うまく行かなければ再インストールですし、うまくいけばしめたものですから、やってみる価値はありました。
フルパッケージの tarball をダウンロードし、tar で展開し、インストールを行いました。この結果、なんとか Mozilla 1.0 が利用可能になりました。かつて、Slackware を導入したとき、tarball で玉砕した身ではありますが、この一年間の経験が、私のレベルをわずかではありますが、押し上げていたようです。ただし、今後 Vine Plus で Mozilla がリリースされたとしても、その恩恵を受けることができなくなったことは、一抹の懸念事項ではあります。
Last Updated 2002/07/13. Copyright Tazoe Kazuya . All rights Reserved 2002