Wine の導入

〜 秀丸を Linux から使おう!Windows アプリも Linux 〜


エディタの悩み

 PC を使う上で、文章の作成は、かなりの割合を占めます。どのようなソフトウェアを使うことも自由ですが、慣れているツールを使えるかどうか、ということが、生産性を決定する最大のものであるといえます。文章を作成するためのツールとして、真っ先に思い出されるものは、Word や一太郎に代表されるワープロソフトとなりますが、それだけが文章を作成するためのツールではありません。

 プログラマなどがよく使うエディタというソフトがあります。これは、元々はプログラムを作成するためのソフトウェアですが、プログラムは、文字入力に他ならないことから、ちょっとしたドキュメントを作成する場合や、文字装飾を行う前の素案などの作成に用いられました。ワープロソフトとは異なり、文字の入力に特化しているため、動作がきびきびしているというメリットがあり、さらには、もっとも多様するプログラム作成でも用いられるため、もっとも身近なツール、ともいえます。

 MS-DOS の時代には、VZ エディタを愛用していました。Windows になると、秀丸を愛用していました。VZ エディタの後継の WZ エディタではないのは、WZ が出る時期が遅かったため、VZ エディタの作者である c.mos 氏が脱帽した秀丸に移行したことによります。

 さて、Linux に環境を移行して、エディタを何にしようか、となったとき、はたと困りました。Linux と言えば、エディタは Emacs か vi か、となるわけですが、私にとっては指に馴染まない部分がありました。vi については、CUI 起動時に活用している、というかこれしか起動できないため、そこそこは使っています。が、Emacs については、Windows 系のキーバインドが体にしみこんでしまっていることもあり、操作に戸惑うことが多く、馴染むまでは至りませんでした。

Wine との出会い

 Wine の存在を知ったのは、実はだいぶ以前になります。ただ、当時の Wine は、ユーザーが手動で設定しなければならない点が多く、Linux がまだ手に馴染んでいなかった身には、少々荷が重いと感じていました。初めて Wine を使ったのは、意外なところでした。それは「一太郎 for Linux」でした。購入した当初、一太郎が Wine で動いていることは、全く知らず、Windows の操作性をそのまま取り入れていることに、かなり驚かされ、ジャストシステムの開発力はすごいなあ、と思っていました。偶然、ファイルを探している時に、一太郎のフォルダを見たところ、exe の拡張子を持つファイルが複数あり、さらには DLL の拡張子を持つファイルまで存在していました。KDE のメニューに登録されているショートカットを見たところ、しっかりと wine で始まる記述があり、引数として一太郎の実行ファイルが指定されていることから、一太郎 for Linux は、一太郎 ver 14 を Wine にて動作させて、Linux 版としていることがわかりました。

 Wine は、これまでは、配布されているソースパッケージをコンパイルして、インストールしなければなりません。現在も、本家である http://www.wine.com にて配布しているものは、ソースファイルとなっており、公式にバイナリパッケージを提供する予定はないようです。ただ、一部のディストリビュータでは、独自にパッケージングしているものもあるようです。ディストリビューションとしてパッケージが提供されていることは、導入がしやすくなるため、難易度が飛躍的に低下します。

 Vine Linux で Wine パッケージが用意されているかを確認します。apt-get update コマンドで、データベースを更新して、apt-cache search コマンドでパッケージを検索したところ、Wine 1.0 が提供されていることを知りました。

[root@t41 root]# apt-get update
[root@t41 root]# apt-cache search wine
qemu - QEMU CPU エミュレータ
wine - Unix で 16/32/64ビットWindoowsプログラムを実行させます
wine-devel - WINE の開発ファイルです
wine-docs - WINE のドキュメント(主に開発者用)
wine-init - WINE で binfmt_misc機能 を使うための起動ファイルです

 apt-get install でパッケージの導入は完了となります。ディストリビューションにパッケージが用意されていると、非常に簡単に導入ができます。

Windows アプリケーションの導入

 Wine は、それだけを導入しても役にはたちません。Wine の上で動作する Windows アプリケーションがあって、初めて有益なツールとなります。Wine 上から、アプリケーションを導入する場合は、GUI でインストールする方法と CUI でインストールする方法があります。ここでは、Windows の流儀にならって、GUI でインストールしてみることにしました。

 Wine には、Wine File Manager という、Explorer ライクなツールが用意されています。コマンドラインから、winefile と入力すると、Wine File Manager が起動します。ここで、うっかり winfile と打たないように注意してください。私は、実のところ、やってしまいました(笑)。なお、tab キーによるコマンド補完機能を使用すると、入力間違いを減少させることができるので、有効活用してください。

 インストールするアプリケーションは秀丸エディタとしました。Wine File Manager から、ダウンロードした hm715.exe ファイルを探してクリックし、File メニューから、Open を選択すると、インストールが始まりました。なお、ショートカットキーとして Enter が使えることとなっていますが、実際は、Enter キーを操作しても、私の環境では、インストールは開始されませんでした。インストール作業は、いわゆる Windows アプリケーションの導入と全く同一です。Wine だから特別何かを行う、ということはありませんでした。

 インストール時に C ドライブに見える場所は、実際には、~/.wine/drive_c ディレクトリになります。なお、~ は、自分自身のホームディレクトリを示す記号なので、あちこちでよく使われます。この機会に覚えておきましょう。drive_c ディレクトリの下に、Program Files ディレクトリと windows ディレクトリが作成されています。wine から実行する場合には、wine の引数として、Windows の実行ファイルを指定することになります。なお、秀丸のインストール時に、デスクトップにショートカットを作成している場合があります。この場合は、デスクトップのアイコンをダブルクリックすることで、Windows で使う場合と同様に起動させることができます。秀丸の常駐も可能となっていますが、意味があるかどうかは、微妙なところです。クリップボードの機能などは、Windows とは異なるため、常駐秀丸の主要な機能は意味をなさないためです。唯一意味のあるものは、キャッシュ効果に起動の高速化、くらいではないでしょうか。

 インストールそのものは完了したわけですが、苦労してインストールした秀丸を使うことは、あまりなかったりします。というのも、wine 自体の起動に時間を要するため、すいすいと使うわけにいかない、というためです。結局、この Web ページの作成も、gedit で行っているほどです。などと言っていたら、gedit がふてくされたらしく、凍り付いてしまいました(苦笑)。

そのほかの Windows アプリケーションは?

 秀丸以外の Windows アプリケーションもいくつかインストールしてみました。すべてが、問題もなく動作したわけではなく、いくつかについては、やはり動作させるまでに至りませんでした。

FileVisor4

 Windows のファイラーとして、一世を風靡した、と個人的には考えているのですが、File Visor を Wine にインストールしてみました。いきなり立ち上がらないところは、すぐに玉砕しそうなところでしたが、じっくりことこと煮込んだスープ、ではなくで、腰をすえて取りかかったところ、何とか動作させるところまではたどりつきました。

 FileVisor では、複数のディレクトリにファイルがあり、実行プログラムが単一のディレクトリにはありません。wine で動作しなかったのは、このためです。ただ、すべてのファイルを単一のディレクトリに集めるのでは芸がないので、共有プログラムについて、ソフトリンクを作成して、対応しました。

MOOCS Player

 @nifty でも、SD Audio の販売を停止してしまったため、配布されなくなって久しいですが、私の携帯 W41CA では、LISMO を使うよりも、SD Audio Player を使う方が使い勝手が良いため、配布ファイルを残しておきました。

 プログラムのインストールそのものは、特段問題なく終了しました。しかし、起動時最初に行うネットからのダウンロードに失敗して、インストールの完了まで至っていない状態でした。ブラウザとしての Internet Explorer を要求しているのかもしれない、と感じています。Dual Boot の Windows XP 側には、インストールが完了しているパッケージがあるので、こちらを使うしかない模様です。

Internet Explorer

 ある意味、最大の大物といえるかもしれません。MOOCS Player がインストール完了しない理由の一つかもしれないため、Internet Explorer が必要と考え、ネットを探してみたところ、wine へ Internet Explorer を導入するため、サポートソフトを作成している場所を見つけました。こちらを導入することで、Internet Explorer 6.0SP1 を Wine 上に導入することに成功しています。

 wine に Internet Explorer を導入するためには ies4linux というツールを使用します。このツールの配布先は http://www.tatanka.com.br/ies4linux/page/Beta となっています(平成20年9月30日現在)。配布ファイルは ies4linux-2.99.0.tar.gz となっています。

 配布されたファイルを展開すると、ies4linux という実行ファイルが見えます。これをダブルクリックすると、下記のエラーが発生します。

エラー:先にcabextractをインストールしてください
cabextractは次のURLにあります: http://www.kyz.uklinux.net/cabextract.php

 さて、cabextract が必要となりますが、RPM ファイルではないようで、インストールには二の足を踏んでいました。そこで、駄目もとで、apt-get install cabextract を実行してみたところ、あっさりとインストールされてしまいました。

# apt-get install cabextract
パッケージリストを読みこんでいます... 完了
依存情報ツリーを作成しています... 完了
以下のパッケージが新たにインストールされます:
  cabextract
アップグレード: 0 個, 新規インストール: 1 個, 削除: 0 個, 保留: 6 個
45.3kB のアーカイブを取得する必要があります。
展開後に 87.4kB のディスク容量が追加消費されます。
取得:1 http://updates.vinelinux.org 4.2/i386/plus cabextract 1.2-1vl4 [45.3kB]
45.3kB を 0s 秒で取得しました (139kB/s)
変更を適用しています...
準備中...                   ########################################### [100%]
   1:cabextract             ########################################### [100%]
完了

 再度、ies4linux をダブルクリックしてみると、次のウインドウが開きます。

 インストールする Internet Explorer のバージョンの指定、Adobe Flash Player のインストール、Internet Explorer の起動用アイコンの作成場所の指定、などちょっとした気配りがなされているようです。必要な指定をして、OK ボタンを押すと、ネットからファイルをダウンロードして、インストールが開始されます。

 数分程度で、インストールが完了しました。Internet Explorer 以外での閲覧を拒否するような Web ページでも、すいーっと表示されてしまうのは、苦笑いしてしまいます。

 えっ、MOOCS Player はどうなったか、ですか?結局、駄目でした。Internet Explorer を導入しても、解消できるものではなかったようです。


Last Update is 2008/10/11. CopyRights Tazoe Kazuya 2008.