T41 の進化!?

− 802.11g の搭載 -


1.T41 キーボード破損!?

 いつも災いは突然訪れます。その日、私は『オープンソースカンファレンス 2005(OSC2005)』に参加するため、上京の準備を行っていました。ふと、PC ラック上のある物をとろうとした時に、それは起こってしまいました。

「ガシャーン」

 机の上にあったはずの ThinkPad T41(以下T41) が机からずり落ちそうになっていることに気づくまで、数秒間の空白があったようで、その瞬間何が起こったかわかりませんでした。しかし現実は冷酷であり、TYGHのキートップがはずれてしまっていることから、何らかの物体が T41 に飛来したことが分かりました。あたりを見たところ、PC ラックから、自分のケーブルでのみ支えられている IBM Rapid Keyboard の存在に気づきました。冷静になってから考えたところ、PC ラック上のものを取った際に、CRT 上に乱暴においていた IBM Rapid Keyboard に触れてしまい、鬼神と化したそれが T41 のキートップをもぎ取っていったのでした。

 さすがに絶句せざると得ませんでした。なにせ、これらのキーの中には、パスワード入力で頻繁に使用するキーが含まれており、あわせて、これから上京する際に、新幹線車中でメール処理をしなければならず、休ませている余裕など、どこにもありませんでした。幸いキートップは見つかっていたので、何とかはめたような形とした上で、あわてつつも新幹線に急ぎました。

 大体出かけるという直前でこのようなトラブルが発生しているわけですから、上京そのものがうまくいくわけがありません。会場を確認することなく東京駅に着いてしまい、この先どこへ向かえばよいかを調べようと思ったまでは良かったのですが、PC を広げる場所を見つけるまで、一苦労してしまう羽目になりました。さらに、ようやく見つけた銀の鈴(東京駅地下の待ち合わせ場所)では、頼みの cdmaOne が圏外になるなど、この時点で当初の予定を1時間も過ぎてしまっていました。何とか電波の届くところをみつけ、開催場所である大久保へ向かうも、今度は会場への道を間違ってしまい、当初予定を2時間も超えて到着する羽目になってしまいました。

 とまあ、さんざんながらも、OSC2005 の会場にたどり着き、なんとかセミナーは受講できたのですが、再びポカをかましてしまったのです。せっかくの東京ということもあり、夜の懇親会にも出席としていたのですが、宿を出るときに、懇親会場を確認しないまま、出発してしまいました。一応、新宿駅南口ということまでは調べていたのですが、詳しい場所をメモすることなく、新宿駅まであとわずかとなってから、致命的なミスを犯してしまったことに気づきました。幸い、近くにネットカフェを見つけ、google にお伺いを立てたところ、場所が分かり、地図をプリントアウトして、ようやく会場にたどり着く、という羽目になりました。

 翌日、当初は出向かない予定としていた秋葉原に出向きました。出発直前に壊してしまった T41 のキーボードを買いに、PS Plaza Wakamatsu に向かったのでした。運良く、T4x のキーボードの在庫があり、この機会にということで、US キーボード化を行いました。ThinkPad は、キーボード交換が簡単に行えるのですが、まだ新しい機体ということもあり、少々不安を感じていました。開店時間をねらって出向いたこともあり、お客が少なかったことから、ついでにキーボードの購入のみならず、交換までお願いしてしまいました。キーボードを壊したことは不幸でしたが、結果として T41 に US キーボードを搭載することになり、なかなかあげることの難しかった腰を上げることができました。

2.Intel Pro Wireless 2200BG(802.11g) 搭載

 US キーボード換装から3ヶ月が経過しました、4月に異動があり、8年間ほどいた部署から、新たな部署へ移りました。これまで全く経験のない部署であり、なれない制度にとまどいながらも、何とか仕事を進めていたところ、課長から、東京の研修に行って来い、という命令が下りました。久方ぶりに、業務として上京することになり、研修の内容はどこにいったのか、気持ちはすっかり秋葉原に飛んでいってしまいました。研修は5日間となっており、前後の土日は自由時間となっているため、最大4日間の時間があるはずでした。しかし、出発前から、研修後の土日に別用が入ってきてしまい、結局研修前に二日間のみが秋葉原に出向くことができた日となりました。

 とはいえ、何か目的をもって秋葉原へ向かったわけでもないため、それほど気合いを入れてショップ巡りをするほどまで至りませんでした。しかし、きっちり PS Plaza Wakamatsu へは向かいました。何とはなく、陳列されている商品を見ていたところ、一つの商品が目に留まりました。それは「Intel Pro Wireless 2200 BG」という MiniPCI カードでした。MiniPCI とは、ThinkPad T21 以降に用意された、デスクトップ用の PCI スロットを Note 用にコンパクト化したもので、指すカードを変更することで、いろいろな機能拡張を行うことができる、ということが歌われていました。T41 には、Intel Pro Wireless 2100 が搭載されており、このカードが 802.11b の機能を提供していました。これを Intel Pro Wireless 2200BG に変更することで、802.11g 対応に upgrade できるというものでした。もちろん、このカードそのものが IBM の拡張オプションであり、ThinkPad で使用するためにある、といっても過言でありません。

 実のところ、3ヶ月前にも、このカードの存在には気づいていました。しかしその当時は、速度にはさほどこだわりがなく、当時の用途としては 802.11b でも足りていたため、購入を見送っていました。しかし、その後使い方が広がり、無線 LAN にも速度が必要となってきたため、急に興味を引かれてきたところでした。さすがに値段は3ヶ月前よりも、少々高価になってきているようでした。今購入しないことも可能ですが、今後製品が入荷するかどうかがはっきりしないことから、思い切って購入することにしました。

 購入する際に、店員さんから、「BIOS を最新版へ Update しないと、MiniPCI カードを交換後起動しなくなる」という情報が提供されました。BIOS Update はリスクが大きく、万が一失敗してしまうと、PC そのものが使用不能になるため、実際に不具合が発生していないと、Update は見送っていました。記憶に残っているもので、TP770Z の BIOS Update が最後ですから、三年以上は行っていません。

 ThinkPad の BIOS Update は、二つの条件が成立しないと、処理が実行されなくなっています。その一つが内蔵バッテリの完全充電であり、もう一方は AC 給電です。一見すると矛盾するこの二つの条件ですが、実は大切な意味があります。基本的に、BIOS Update では AC 給電下で行われるようになっています。これは、バッテリの劣化等で、Update 中に処理が停止してしまうことを防ぐ意味があります。もう一方の内蔵バッテリの完全充電は、万が一 Update 処理中に AC 給電がたたれてしまっても、内蔵バッテリからの給電により、Update 処理を続けることができるように、保険をかける意味があります。完全充電できないバッテリでは、万が一の自体となったときに、役に立たない可能性があります。他の作業であれば、ハイバネーションに入ることで、給電再開後に処理を続けることができますが、BIOS の Update は失敗すれば、即 ThinkPad が起動不能に陥ることになります。そのような状態を避ける意味で、内蔵バッテリによる保険をかけた上で、AC 給電状態での Update を強制しているわけです。

 bios Update には、長らく FD が使用されてきました。しかし、この T41 のように、FD を内蔵しない ThinkPad が登場したことなどから、FD 以外の方保でも、BIOS Update が可能となりました。今回は、この FD Less な E-Flash 版にて、BIOS Update を行うこととなりました。E-Flash 版は、Update 処理を実行すると、PC を reboot して、Update 用の PC DOS のサブセットが起動するようです。それ以後は、FD 版と同様の手順で Update 処理が進みます。ここで、一つ気になることがありました。それは BIOS Update 処理において、張っているの充電を示す電源インジケータがオレンジ色に点灯していたことです。電源インジケータがオレンジ色の点灯ということは、バッテリの充電中を示します。従って、先ほど述べた、BIOS Update 処理時の2大要件である、内蔵バッテリの充電は確認していない、ということになります。いつからこのような使用となったのかわかりませんが、どうも、T41 については、内蔵バッテリの充電は確認していない、という事になります。さすがに、バッテリを外して、BIOS Update を行うようなリスクの高い実験は行うことができませんので、真実は確認できていません。

 何はともあれ、BIOS の更新ができたので、早速、Intel Pro Wireless 2200BG を搭載することとしました。交換に当たっては、キーボードとパームレストの取り外しが必要となりました。しかし、前回のキーボード交換は、ショップの方にしていただいたため、自分の手で T41 を開くことは、今回が初めてとなりました。それでも、キーボードを取り外すために必要なネジは、アイコンで簡単に判別でき保守マニュアルを見なくても、何とか作業が行えました。パームレストを取り外すためには、さらにいくつかのネジを外す必要がありましたが、これもすぐにわかりました。ただ、これまでの ThinkPad に比べると、使用されているネジの強度が少し落ちているように感じられ、危うくネジ頭をなめそうになったのは、なかなかつらいところでした。注意が必要な点としては、筐体右側のハードディスク装着部のネジは、他のネジと異なり、部分的にネジ切りされているので、間違いなく元の場所に装着する必要がある、ということですね。それ以外は、特に難しい点はありませんでした。

3.T41 起動確認および Intel Pro Wireless の動作確認

 装着は完了したものの、起動させてみないことには、作業完了とは言えません。先に店員から話のあった BIOS によっては起動不可、という言葉も脳裏に残っています。そこで、さっそく通電を行ったところ、心配は杞憂に終わったようで、無事 IBM のロゴが確認され、システムは起動してきました。取り急ぎ、Windows 側を起動させたところ、デバイスマネージャが新しいデバイスとして Intel Pro Wireless 2200BG を見つけたので、取り付けは正常に終わったと考えられました。この時点では、802.11 の AP が近くになかったので、実際に試さずに、Windows を終了させました。

 装着が無事完了していることを確認できたので、本命の TurboLinux での動作をさせてみることにしました。といっても、行った作業は、Firemware(ipw2200) をダウンロードし、Firemware のディレクトリに展開するだけなので、難しいことは何もありません。Firmware が導入できた状態で、Intel Pro Wireless 2100 と同様に、modprobe ipw2200 を実行することで、Intel Pro Wireless 2200 はあっさりと認識されました。

 802.11g の AP のある場所にて、接続試験を行ったところ、無事接続できました。当初 ESSID や WEP の設定変更を忘れていて、接続できない理由がわからずに苦しみましたが、気づいてしまえば、そう難しい問題ではありませんでした。ただ、なぜか iwconfig コマンドによる ESSID および WEP キーの変更ができず、turbonetcfg による変更が必要となったところは、少しすっきりしないところではありました。

 その後、HotSpot に対する Linux での接続テストを行ったところ、多少の手間はかかるものの、無事利用可能であることがわかりました。注意すべき点としては、(1) ESSID と WEP キーは指定のものを使う、(2) 最初のアクセスでログインが必要、の2点でした。この中で (2) は少々手間取りました。認証ページを開くために Java Script あたりを使っているのか、Windows 側ではスムーズに開かれるものが、Linux 側ではうまく開けませんでした。そこで、Windows 側で開いたアドレスをメモして、Linux 側で強制的に開いてみることとしたのですが、認証前は、DNS 設定などもなされおらず、接続してすぐにブラウザを起動しないと、認証ページが開けない、ということが何度かありました。このあたりは、時間がなく、細部に渡っての検証ができていないところですが、おそらく、起動時の DHCP 要求にあわせて、認証ページを開かせる仕組みがあるものと考えています。

残るパワーアップは...

 ほぼ、T42 に匹敵するスペックとなった我が T41 ですが、残るは CPU 換装だけとなりました。実は、市内のある店舗にて、Pentium M 2.1GHz が販売されているものは見つけています。が、購入は見送っています。なぜなら、現時点でも CPU パワーはあまりあるところであり、必要性のない Power Up となることからです。無線 LAN を 802.11g に更新したのは、 File 転送の速度向上をねらったものであり、HDD の容量変更は、容量不足のためですし、キーボードを US に変更したのは、JP キーボードを壊してしまったため、とそれぞれの理由から、PowerUp を行ったわけです。しかし、現時点では CPU パワーの不足を感じるような用途もなく、また、CPU 単体で 35,000円と高額でもあることから、現時点での更新は考えていません。

 Windows Vista あたりになると、CPU パワーの不足もありえるかもしれませんが、そろそろ Windows に対する興味も薄れてきているので、当面はありえないこととなるでしょうね。エンコード処理に CPU パワーが必要、という意見もありますが、我が家の最速 CPU である Athlon XP 2000+ でさえ、さほど速度向上は望めないようですから、Pentium M 2.1GHz にしても、私にとってはメリットがないともいえます。


Last Update is 2005/07/26. CopyRights Tazoe Kazuya 2005.