ネットワークのある生活

ネットワークのこれまで

 ほんの少し前までは、固定料金の通信回線は、特別な人だけが利用できるものでした。一般人は、従量制の通信回線を利用することがほとんどで、ネットワークを利用すること自体が特別なことでした。パソコン通信を利用するのは、一部の先進的なユーザーのみで、多くの PC ユーザーが、多機能ワープロとしての利用がほとんどで、通信を行っていること自体が、特殊な扱いを受けていた時代は、確実にありました。

 Windows 95 が登場することにより、世の注目を集めた『インターネット』は、一部の人間だけが使用していた通信を、瞬く間に一般ユーザーの中に広めていきました。魅力的なコンテンツをそろえつつあった『インターネット』は、人々を魅了し、一部の特殊な人間だけが行っていた通信を、一般家庭に浸透させ、それまでの一太郎万歳から、インターネットマンセーに変革を遂げていました。

 インターネットの面白さが広まりつつあった時期に、一つの大きな問題となったことがあります。それは通信にかかる料金でした。その当時、電話料金は完全従量制であり、使えば使っただけ料金がかさんでしまい、家計を圧迫するようになっていきました。当時市内通話であれば、10円/3分でしたので、一日あたり30分ずる使用すると、30分×30日=900分=3000円となると思われるでしょうが、電話料金は時間距離併用であり、かつ、通話ごとに料金を計算していくため、常に3分ずつ課金されていくとは限らないのです。理論上は10円/3分であっても、事実上はその3分の1の10円/1分というところがせいぜいとなり、結果としては、9000円にも達します。さらに、この通話料金の他に、プロバイダの接続料金が従量制で加算されるということになります。このプロバイダ料金が、10円/10分というものであったので、先ほどの使用時間から積算すると、約900円となります。単純計算で、ほぼ 10,000 円に達してしまうのです。

 そんなときに、救世主として現れた画期的なサービスがありました。それが、『てれほーだい』でした。夜間11時から翌朝8時までの間を固定料金で利用し放題(ただし通話先は限定)というもので、インターネットのヘビーユーザーにとっては、最大の福音となるものでした。このころプロバイダの方でも、月極めや年極め料金を始めており、年ぎめで10,000円〜20,000円、月極めで 2,000円あたりでした。インターネットの利便性を感じ始めているユーザーは、次第に年極め方式にシフトすることで、プロバイダ料金は定額になりました。しかし通話料金だけは従量制となっていて、使えば使うほど、負担が増えることになり、おちおちと使っているわけにもいかなかったわけです。そんなところへ『てれほーだい』が登場したわけですから、数多くのユーザーが飛びつきました。このため、夜11時を過ぎると、ネットワークのスループットが激遅になり、11時から8時までの時間を、てれほタイムとさえ呼ぶようになりました。『てれほーだい』を契約しているユーザーにとっては、いくら遅かろうとも、翌朝までに終わってさえいればよく、従量料金は割を食うことが少なくありませんでした。しかも、当初の『てれほーだい』は、ISDN 回線のみで、さらに、サービスエリアが限定されていて、すべてのユーザーが利用できるものではありませんでした。

 『てれほーだい』が始まったことにより、ある程度は通信料金の固定化ができたわけですが、それでも問題が解決できたわけではありませんでした。『てれほーだい』はあくまで夜間のサービスであり、昼間使用したくても使うことができません。また、夜間が故、翌日に影響が残るという副作用もあり、ユーザーからは、24時間のてれほーだいを求める声が大きくなりつつありました。

 そんな通信業界に一台変革が訪れました。それが、ADSL でした。なんといっても、完全固定料金で使用でき、さらには ISDN よりも高速という触れ込みは、インターネットのヘビーユーザーからすれば、当然飛びつきました。当初 NTT は、ISDN を積極的に売り込んでいたことから、ADSL へ変更するわけにはいかず、ADSL に大して散々なことを言っていました。なにせ、ADSL をやるつもりはない、ADSL は帯域保証がないので維持ネスには使えない、サービスエリアが狭く限定的な提供でしかない、など、今の Flet's ADSL を推進している NTT とは思えないものでした。

 しかしながら、巨人 NTT でさえも、時代の流れを止めることは出来ませんでした。東京めたりっく通信が始めた ADSL サービスに、E-Access や Acca が登場し、Yahoo の台頭となると、黙ってみているわけにはいかず、ADSL 事業を始めるにいたりました。その結果はいまさらいうまでもないでしょう。今では当の NTT が、「ADSL いかがですか〜」としまっています。

 この手の最新サービスは、多くの場合、大都市圏でしか利用できないものが多かったわけです。知られて市内かもしれませんが、ISDN でさえ、サービス利用不可とか、サービス未提供ということがあり、現在でも ISDN でさえ使用できない場所があります。

 私が引越しを考えた一つの理由に、ADSL サービスを受けたい、ということがありました。しかし、現在では私の地元でも ADSL サービスが提供されています。これには、地元の自治体が NTT に申し入れをした結果、サービスエリアとなったことによります。宮城県内でも、かなりの広範囲で NTT の Flet's ADSL サービスが提供されるようになってきました。地元の友人のところでも、ADSL サービス提供の話が出るや否や、申し込みを行い、現在 Flet's ADSL 12M の契約で、実効速度はな、なんと 10Mbps over に達しています....Yahoo BB 8M で契約して、ようやく 5Mbps に達しようとしているのに、ここより早いとは......

リモート環境の構築

 自宅の外から自宅 PC にアクセスしたい、ということは、ADSL が利用できるようになる前から、夢見ていたことでした。なにせ、アナログ回線しかないころから、何とか自宅 PC に外からアクセスできないかと、いろいろと試してみました。最初は、自宅のアナログモデムで着信回線とし、当時は珍しい PHS で自宅にアクセスできる環境を構築しました。この環境は、速度が非常に遅いという問題点がありました。高速なモデムを使っても、着信可能な速度は 33.6Kbps が上限であり、PHS 側の 29.2Kbps ともあいまって、なかなか速度を伸ばすことができませんでした。このころは、自宅にアクセスできるだけでうれしい、という状態でした。

 その後、ISDN を利用するようになったところ、今度は接続する環境がない、という状況に陥りました。なにせ ISDN で着信させるためには、アナログポートのモデムに着信させるか、デジタルモードの TA で着信させるか、のいずれかになるわけですが、前者ではこれまでと何ら変わりないことになるため、速度的な問題もあり、後者が望ましいわけです。しかし、持ち運びできる ISDN などはありませんので、着信させたくでも、発信側を用意できないことになります。それではアナログ着信で我慢してはと思われるでしょうが、それもままなりませんでした。というのも、この ISDN は実家の電話であったため、アナログ番号は Fax に接続されていました。このため、アナログ回線にかかってきた電話が、Fax なのか Modem なのかを切り替えることが必要になったのですが、当時はこのような方法が用意されていなかったために、どうしようもなかったのです。その後 PHS が高速化され、PTE 経由で ISDN デジタル回線に接続できるはずだったのですが、我が家の交換機との相性か、どうにもうまく設定することが出来ずにいました。

 ADSL 環境を構築してからは、これまでとニュアンスを変えたリモート環境を構築しました。それは、インターネットを利用したプライベートネットワークの構築でした。自宅にブロードバンドルータを設置すると、一般的にはホームサーバーの公開に走るのでしょうが、さすがにそれは私は避けました。すでに、レンタルサーバーを使用していることもありましたが、自宅サーバーのセキュリティを一定に保つということが、自分のスキル的に難しいと感じたためでした。

 とはいえ、自宅のマシンを外から使いたいと感じることが多くなってくると、自宅への接続環境がほしくなります。そこで、VPN の構築を行い、PPTP による仮想プライベートネットワークの構築を行うまでになりました。ところが、この VPN 、私が利用するだけにはとどまらないことになるのでした。

 私の周りには、遠隔サポートを求めるユーザーが数名います。近いところでは 50km ほど離れており、遠いところでは 300km ほど離れています。さすがにこの距離になると、そうそうメンテナンスに出向くというわけにはいかなくなります。そこで、自分が使うために用意した VPN 回線を利用して、リモートメンテナンスを行うことを考えるようになりました。もちろん、VPN のユーザーを同一にしたのでは、セキュリティの問題もありますので、それぞれの個人ユーザーを作り、個別にパスワードを発行して、個別の VPN を構築するようにしています。この結果、我が家を経由して、二つの暗号化経路を作成して、遠隔地の PC 同士を接続することが可能になりました。関係する2台を直接接続すれば良い、と思われるでしょうが、その環境を構築するのは誰になるか、となると、既存の環境を運用していくほうが、まだスキルが低くてすむ、というメリットもあります。

ネットワークのある生活

 出先のほとんどで ADSL が利用できるようになったこともあり、ネットワークが生活の一部になったことがよくわかるようになりました。出先から、必要とあれば、自宅の環境にアクセスして作業をすることができ、リモートメンテナンスには VPN により暗号化経路を作成した上で、VNC などにより自宅にいながら、あるいは自宅の外であっても、メンテナンスが行えるようになり、出歩く際に、ばたばたせず、必要あれば自宅にアクセスすることで、用が足せるようになりました。もちろん、インターネットの各種情報を活用することは、これまで同様です。しかし、自宅にいるのと同様な環境がどこでも利用できるということは、こんなに便利なことなのか、と改めて感じています。


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