MS-DOS の基礎講座 Vol 3.

外部コマンド


 いよいよ、外部コマンドに入ります。何の外部かは、おいおい解説していきましょう。


8.Format(フォーマット)

 MS-DOS では、基本的にどんな記録媒体であっても、この Format を行います。最近はほとんど見かけませんが、かつてはフロッピーディスク(FD)も、購入後に Format しないと使えないのが当たり前、という時期がありました。個人的には、今でも重要なデータを保存する場合には、一度 Format をかけて、エラーのない FD であることを確認しないと、恐くて使えません。

 さて、この Format とは、何をしているのでしょう?記録媒体は、ちょうど無地のノートにあたります。無地のノートは自由な使い方ができる反面、罫線のあるノートに比べて、文字が書きにくく感じられると思います。MS-DOS はもっとお馬鹿さんで、自分の読み込める幅を、かってに決めていて、それにあわないと、規格外だ!と読んでくれません。そこで、新しい無地のノートに、MS-DOS が読み込みできる幅の罫線を最初に引いておく必要が生じます。この無地のノートに罫線を引く作業、が Format なのです。Format することで、記録媒体は MS-DOS で使用できるようになるのです。これが故、Format を初期化とよぶのです。なお、Format 済みとして販売されているものは、あらかじめ Format 作業が終わったものなのです。

 さて、この Format 、容量が大きくなればなるほど、かなりの時間がかかります。物理的に記録媒体に書きこまなければならないため、読み書きの遅い FD を Format すると、相当待たされることになり、急いでいる時などは、なかなかイライラさせられます。しかし、原理的に言えば、一度 Format した FD は、MS-DOS で使用できる状態になっているため、ファイルの管理情報さえ消してしまえば、あたかも Format したかの状態を作りだすことができます。このように、管理情報だけをクリアする Format を『クイックフォーマット』と呼びます。その名の通り、ほぼ一瞬で終わりますが、実際のデータは消去されていないため、それなりのツールを使用すると、元のデータが簡単に復元されてしまいます。データ消去の意味で使う時には、注意が必要です。

 Format コマンドは、いくつかの追加指定(これをオプション、またオプションスイッチと呼びます)があります。書式は下記の通りです。

書式

   Format  処理対象ドライブ  オプション

使用例1 FD のフォーマット(クイックフォーマット)

    A:\>FORMAT  A:

使用例2 HDD(C:) のフォーマット(強制フォーマット)

    A:\>FORMAT  C: /U

使用例3 システムの起動可能な FD の作成(ただし日本語表示はできません)

    A:\>FORMAT A: /S

使用例4 FD の信頼性チェック

    A:\>FORMAT  A: /U

 

 FORMAT コマンドは非常に強力なコマンドであり、使い方を誤ると、大怪我を引き起こします。使用にあたっては、十分に注意しましょう。


 9.FDISK(エフディスク)

 HDD を扱うコマンドです。システムに新しい HDD を追加する時、最初に一度だけは使用します。HDD を使うためには、最初に FDISK を使用して、HDD に区画を作成する必要があります。初心者によくある 『HDD を購入したのに、マイコンピュータにドライブが増えない』 というトラブルは、この区画作成をしていないために起こるのです。

 区画には、二つの種類が存在します。一つは基本区画(Primary Partition)と呼ばれるもので、もう一つが拡張区画(Extended Partition) です。MS-DOS では原則として、一つの HDD には基本区画が一つしか作成できません。このため、HDD を複数の区画に分割しようとすると、必然的に拡張区画を作成しなければなりません。さて、なぜ HDD を複数の区画に分割するのでしょうか?

 HDD を一つの区画で使うことはまずいのでしょうか?私は、HDD が一つしかない場合は、非常に危険である考えています。これは、システムがデータを巻き込んで壊れてしまう危険性があるためです。HDD は回転部分をもつため、他のデバイスに比べて、壊れる危険性が高いデバイスといえます。HDD がクラッシュした場合、HDD 全体が壊れることはあまりなく、その一部が壊れる場合がほとんどです。しかし、scandisk で修復できないような深い傷を負った場合、Format しなおさなければならないことがあります。

 ディレクトリを作成しておけば、単一の区画でも構わないのでは?という意見が寄せられることがあります。たしかに、ある程度までは、それでも構わないでしょう。ところが、一定量を超えると、ディレクトリの階層が深くなりすぎてしまい、コマンド処理する時に、打鍵数を増やすことになり、かえって扱いにくくなる場合があります。特に最近の大容量 HDD では、その大きさゆえに、深い階層を作成してしまい、ファイルのありかに悩むことも、少なくありません。このあたりも、区画を分割する理由の一つです。

 区画を作成する際に、もう一つ注意しなければならないことがあります。それは 『ドライブ名の割り当て規則』 です。MS-DOS では、ドライブ名の割り当て規則は、基本区画→論理ディスクの順になります。論理ディスクとは、拡張区画内に作成するもので、一つの拡張区画には複数の論理ディスクを作成できます。ドライブ名はこの論理ディスク単位に割り当てられます。拡張区画そのものには、ドライブ名が割り当てられないことに注意します。さて、複数の HDD を使っている場合はどのようになるのでしょうか?これは、プライマリ → セカンダリ の順になります。もし、Master と Slave であれば、Master → Slave です。これらを整理すると、次のようになります。

drive_letter.jpg

ドライブ名は

  C:プライマリの基本区画
  D:セカンダリの基本区画
  E:プライマリの論理ディスク
  F:セカンダリの論理ディスク 

の順に割り当てられます。このため、二つめのドライブを付けると、ドライブ名割り当てが変わってしまいます。特に Windows を Dドライブ以降に入れているような場合は、特に注意する必要があります。

 

 


 FDISK には CUI なインターフェイスがあります。次は基本的な流れを見ていきましょう。

FDISK 起動直後はこんな感じになります。

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FDISK を起動した時に、HDD の容量が 512MB を超えていると、このようなメッセージが表示されます。これは FAT32 を使用するかどうかの確認で、FAT32 を使用できない Windows 95 初期版や Windows NT などと共存するような場合は、『N』と答える必要があります。Windows 98 と Windows 2000 を使う場合は、『Y』と答えます。

fdisk02.jpg - 30,021Bytes

 FDISK の基本画面です。Windows 95 や PC DOS でも、画面はほとんど変わりません。区画を作成する処理は『1』、区画を削除する処理は『3』、状態の表示は『4』となります。複数のハードディスクが接続されていると、『5』のメニューが表示されます。

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 『1』 を選択すると、この画面になります。先に説明したように、作成できる区画は〔基本区画〕 と 〔拡張区画〕があります。どちらを選択すべきか、を決定するためには、その HDD が一台めであるかどうか、によって異なります。HDD が一台めであれば、システムが起動できる区画が必要となりますので、基本区画を最初に作成する必要があります。しかし、2台めである場合は、むしろ基本区画を作成することは都合が悪いことがあります。なぜなら、基本区画に先にドライブ名が割り当てられるために、これまでの D ドライブが E ドライブになってしまう危険性があるためです。なので、2台め以降の HDD であれば、基本区画は避けるべきです。この問題は、毎月どこかで必ず発生しています。

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『1.基本 MS-DOS 領域』を選択すると、このような画面になります。ここで、『Y』を選択すると、HDD には単一の区画を作成することになります。複数の区画に分割する場合は『N』とします。

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 どの程度の容量を割り当てるのか、を設定します。容量の設定は、具体的な数値の他、割合で入力することができます。ただし、私の経験上、割合を入力したことはありません(^_^;;。

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 領域確保が終わると、このようなメッセージが表示されます。システムが UNKNOWN なのは、Format 前のためです。次の処理に進むためには、ESC キーを押します。一つ画面が戻ります。続いて、拡張区画を作成します。

 

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 拡張区画は、丸ごと確保する必要があります。ここで、残りを作っても、使える領域にはならないので、拡張区画は、すべての容量を割り当てます。実際にドライブ名を割り当てされるのは、この後に作成される論理ドライブ単位ですので、ここではあまり深く考えなくて、大丈夫です。

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拡張区画が作成されると、すぐに論理ディスクの確保になります。ここで、どの程度割り当てるか、きちんと考える必要があります。区画の容量変更は、この FDISK で行うしかなく、やり直すとした場合、すべてのデータ(導入済みシステムを含む)が消去されてしまいますので、きちんとした容量計算を行うようにしましょう。慣れないうちは、どの程度が必要なのか、よくわからないかもしれませんが、使い込んでいくうちに、自分に必要な容量がわかります。

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領域確保が終わると、上記のメッセージが表示されます。拡張区画内にあまりがあれば、論理ディスクの確保を何度か行うようになります。

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 FDISK を終了すると、必ず再起動しなくてはなりません。ドライブ名が変わってしまうためです。なので、領域確保は、極力まとめて行いましょう。再起動すると、作成した区画にドライブ名が割り当てられています。すぐに使えると思いがちですが、そうは問屋が卸しません。この後、Format をすることで、初めて使用可能になります。