現在の PC は、販売の時点で数多くのソフトウェアがプリインストール(事前導入)されています。プリインストール( Pre Install )とは、もともと、購入時点であらかじめソフトウェアが導入(Install)された状態を指します。
もともと PC では、その上で使用するアプリケーションはユーザーに決定権があり、必要なソフトウェアをユーザー自らが導入なければなりませんでした。しかし、PC をはじめて使用する人々にとって、いきなり導入作業を行うというのは、かなり高い障壁となっており、PC を普及させようと考える人々にとっては、非常に問題のあることでした。
これは、特に、PC を使う上でもっとも重要な基本ソフトウェアである OS(Operating System)についても例外ではなく、PC の購入者は、同時に入手した OS をまず PC に導入しないことには、PC 上でなにか作業を行うことが出来ない、という、ユーザーにとっては、購入に次ぐ、難易度の高い作業となったのでした。
とはいえ、実はこの過程は非常に重要なものでした。というのも、最初に OS のインストールで学習させられるため、次に OS を再導入するときには、それほど苦労しないで、実行することが出来るというメリットがあるからです。最初に重要な操作を習得していることで、それ以降の作業がさほど抵抗なく続けられるわけです。
ところが、これに困ったのが PC メーカーです。なぜなら、PC が一般家庭に入るにつれ、OS を導入できないユーザーのサポートに、非常に多くの時間を要するようになり、販売台数の増加=サポートコストの増加という、ありがたくない副作用を巻き込んでいたのです。そもそも、一定の知識を前提に発売されていた PC を、何も知識を持たない一般人に対して販売した時点で、ある程度は予測されていたことではありますが、さすがに普及にかかる急激な増加は、メーカーの予想をはるかに超えたものでした。
そこで、メーカーは一計を案じます。それは、「面倒な OS の導入作業をあらかじめしておこう」ということです。しかし、ここでひとつの問題があります。事前導入 OS は、いったい何を選択すればよいのでしょうか?
しかし、これも実は問題ではありませんでした。当時の多くのユーザーは Windows 3.1(MS-DOS を含む)を使用していたため、事実上 Windows 3.1 を事前導入 OS として選択することが、最良の方法であるといえたのです。
しかし、OS のプリンストールは、新たな弊害を引き起こしました。それは、アプリケーションのインストールをユーザーが行えない、というものでした。以前であれば、OS の導入を通して、インストール作業を体験することで、アプリケーションのインストールの準備ができたわけですが、OS がプレインストールとなることで、ユーザーはアプリケーションのインストールで初めて導入作業を行うことになったわけです。そして、ユーザーは再びサポートに大量のリクエストを発行することになったのです。その結果、メーカーでは、OS だけでなく、アプリケーションまで含めて、プリインストールするようになったのです。
インストールという作業が不要になったことは、すぐに使えてよいのでは?と思われるかもしれません。しかし、必ずしも良いことばかりとはいえません。
最大の問題は、基礎知識を習得しないことにあります。OS やアプリケーションのインストールを通じて習得されるべき基礎知識を得ることが出来ない、ということは、ことトラブルシューティングを行う際に、非常に問題となります。基本的な用語や動作がわからないために、自分の状態を説明できなかったり、得られたアドバイスを理解できなかったりする状態が、最近非常に多くなってきています。
また、プリインストールされたアプリケーション以外を使えない、という弊害があります。プリインストールされたアプリケーション以外の、市販のアプリケーションをインストールすることができないのです。
Windows アプリケーションであれば、Setup.exe ないしは Install.exe という名前でセットアップツールが用意されていることが予想されます。また、オンラインアプリケーションなどでは、インストーラを用意せず、ユーザーが指定したフォルダへファイルをコピーするだけで終わるものもあります。しかし、これらの作業ができない人が最近増えているのです。
MS-DOS のころからのユーザーであれば、なにか作業を行うときにディレクトリを作成することは、当然のように行うことですが、このディレクトリのイメージがないために、ルートディレクトリにファイルをばら撒いてしまうことが、少なくありません。
一つ二つのファイルであればよいのですが、アプリケーションの構成ファイルなどは、十数個から数十個にわたることも少なくありません。これだけの数になれば、万一混ざってしまうと、区別することが困難になります。そして、往々にして一括削除を行い、Windows を起動不能にしてしまうことが多くなります。なぜなら、ルートディレクトリには絶対必要なファイルがいくつかあるためです。
このようなことにならないように、通常は必ずディレクトリを作成し、その中に関連ファイルを収めるようにします。そうすれば、不要になった場合には、このディレクトリをばっさり削除することで、片付くわけです。MS−DOS を経験した世代では当たり前のこのような知識も、BlackBox 化の進んだ Windows ユーザーでは、知る由もないのです。
与えられた PC を使うだけのユーザーであれば、それでもよいでしょうが、自宅の PC となれば、管理すること自体も、ユーザーの責任となります。となれば、なにかトラブルがあった場合に、解決するためには、ユーザーの持つスキル(技術)が大変大きな意味を持ちます。したがって、Windows を使う以上、MS-DOS の知識は必須であると、私は思います。
Windows だけをインストールしたい、そう考えるユーザーは少なくありません。しかし、現在は多くの PC ではリカバリー CD という形で、工場出荷状態へ戻すことが簡単にできるようになっています。工場出荷状態へ戻すということは、Windows だけでなく、余計なアプリケーションまで戻すことになります。これでは、クリーンインストールにはなりません。Windows だけの CD-ROM もバンドルされていないため、クリーンインストールは不可能のように思われます。しかし、本当にそうなのでしょうか?
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まずは、Windows のマスター CD を作成します。この作業には、CD-R ドライブが必須になります。なお、CD-R ドライブがない場合は、MO でも代用可能です。ただし、インストールに当たっては、対応策が必要になります。
Windows のマスターファイルはどこにあるのでしょうか?それは、C:\Windows\Options\cabs にあります。なぜ、そういえるかというと、これまでの経験則だからです。おそらく Microsoft のガイドラインとして、このディレクトリを推奨しているのだと思われます。
C:\Windows\Options\cabs にファイルが入っていた場合、その中に Setup.exe があるか確認しましょう。このファイルがない、またはこのディレクトリそのものがない場合、これから先の作業は無意味ですので、あきらめてください。
見つけたならば、ファイルをコピーします。コピー先のディレクトリ名は、OS にあわせて作成してください。Windows 98 であれば Win98 と、Windows Meであれば WINME とすればよいでしょう。他の名前を指定することも出来ますが、メディア作成後に中身を確認する上でも、ここは名前を合わせておくことをお勧めします。仮にここでは C:\Win9x に複写することとします。
次に Windows の起動ディスクを作成します。CD Boot にしない場合は不要ですが、わざわざ起動用の FD と CD-ROM を別に用意するのは面倒だと思いますので、Bootable CD を作成することとします。なお、Bootble CD の作り方は、使用するライティングソフトによって異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。Windows 98 の起動ディスクは2枚組みになりますが、これは中身を整理して、一枚にまとめておく必要があります。
後は CD-R ライティングソフトを使って、C:\Win9x を Bootable CD として CD-R に焼きます。起動用 FD には、先ほど作成した起動ディスクを用います。CDーR が焼きあがったら、インストール用の Product ID を確認しておきましょう。
Windows のマスターメディアが出来たからといって、あわててインストールをしてはいけません。なぜなら、ディスプレイドライバやオーディオドライバなど、一部のドライバは HDD 上にしかない場合があるためです。この準備を怠って、インストールを始めてしまうと、取り返しのつかないことになります。
ThinkPad に関していえば、ほとんどのドライバは IBM e テクニカルスポット でそろうと思われますが、国内限定のモデルについては、事前に確認しておくことをお勧めします。
ここまでできれば、後は作成した Windows メディアを使って、Windows をインストールするだけです。もし、Windows のインストールが自動で進んでしまうような場合、CD-ROM の Win9x ディレクトリに MSBATCH.inf というファイルが存在していないか、確認してください。このファイルがある場合、自動でインストールされてしまいます。
ここで作成した Windows メディアを使って PC を起動すると、A:\> でとまりますが、異常ではありません。なぜなら、Windows 起動ディスクを使って、PC を起動した場合は、これでとまるからです。この先に進める方法は、考えてみましょう。工夫すれば、自動的にインストーラを起動させることも可能です。
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