メールの常識

〜これを知らなきゃ、メールは使っていかん!〜


 最近では携帯電話での E-Mail のやりとりができるようになり、非常に身近なコミュニケーションツールとしての Mail が利用されていますが、基本的な約束ごとが守られていないために、不利益を被ることになっている例が、少なくありません。有名なものの一つは、私の Web のトップページでも書いていますが、HTML メールの送信があげられますが、それ以外にも問題となるものがありますので、ここであわせて触れておきます。特に ML(メーリングリスト)に参加される場合には、ここで書いてあるようなことをきちんと守らないと、本来得られるはずの情報が得られず、せっかくの場が無駄になってしまいますので、ご注意ください。

1.メールの返信と新規送信は別のもの

 相手のアドレスをいちいち打つのが面倒、というだけの理由で、新しい内容のメールを送る際に、今回の内容とは全く関係のないメールに対して、返信操作を行って、新規メールを作成される方が多く見受けられます。友人とのやりとりであれば、これでもかまいませんが、ML などに流すものではこのようなやり方をしてはいけません。  

 返信されたメールには、そのメールがどのメールに対する返信か、という情報が付属しています。この情報はRefeence ヘッダや In-Reply-to ヘッダという、決まった形で、返信メールの中に埋めこまれています。メーリングリストなどでは、複数の人間が一つの話題についていろいろと返信を繰り返すため、関連づけを明確化するうえで、スレッドというものが利用されています。このスレッドを組み立てる上で使われるのが、Reference ヘッダや In-Reply-to ヘッダになります。このため、新規の内容にもかかわらず、まったく関係のないメールへの返信で行うと、本来的にはべつのスレッドになるべき発言が混在してしまい、スレッド自体がめちゃくちゃになってしまいます。


 上の画面をみてください。途中からサブジェクトが変わっています。話の必要性があって、サブジェクトを変更することがありますが、このメールはまったく別の内容のものが混ざっています。このように、関係のない発言に適当に返信することはML の購読者にとっては非常に迷惑です。もし、貴方がなにか問題解決のために、話の流れを追っかけているときに、急に関係の内話題が入ってきたら、貴方は気持ち良いでしょうか?流量が多い ML になればなるほど、興味のあるツリーだけを見ていく人も少なくありません。もし、適当な発言に返信して、ML へ新規登録していたために、知識のある人が、すでに終息したツリーだからといって、中を読まなければ、それは誰の損になるのでしょうか?

2.相手に呼んでもらえる文章を書く。

 Mail は相手が読んで、初めて成立するコミュニケーションです。何はともかく、相手に Mail を読ませることが必要です。しかし、何を言いたいのか、何を聞きたいのか、相手が理解するような Mail では、だれも読んでくれません。自分の書いた Mail が自分しか読んでいなかったら、それはあまりにもかなしいでしょう。  

 Mail に慣れていない時期は、どうしても指摘されてしまったり、言いたいことが伝わらなかったりすることが、少なくありません。しかし、場数をこなすことで、読みやすい Mail を各技術は身についてくるものです。会社に入ったばかりの新入社員も、営業で何件も回っていくうちに、セールストークがうまくなっていくように、Mail も数多く書いていくうちに、自然と何が良くて何が悪いか見えてくるようになります。まわりから問題点を指摘された時、何が悪かったのかをきちんと考え、同じ過ちを再び起こさないようにすることを心がけましょう。

 ML に関していえば、まわりの雰囲気を考えて、発言するようにしましょう。中には、初投稿からなれなれしい文体で、意味不明な Mail だったりする場合がありますが、このような Mail は、叩かれこそすれ、決して喜ばれません。ML とて、公式の場であることには違いありません。公式な場での振る舞い方がわからないようであれば、ML に参加してはいけません。

3.ローカルルールに慣れよう

 これは ML に関しての話になります。多くの ML では、いろいろなローカルルールが定められていることがあります。これらのローカルルールは、いろいろな経過を経て作成されてきたものであり、新参者がかき回すものではありません。ある程度慣れてきた上であれば、ローカルルールに関しての議論を行うこともかまいませんが、まずはその ML のローカルルールを守りましょう。

 ML にどのようなローカルルールがあるかは、過去ログを見てみると、ある程度掴めたり、その物ずばりを見つけられたりします。あるいは、ML に参加する時点で、ローカルルールが送付されてきたりしますので、必ずきちんと確認するようにしましょう。よく、ML の退会依頼を ML に投げている人を見かけますが、ML の退会手続きは、ML に参加するときの承認 Mail などに記載されていたり、ML から配送された Mail のヘッダに記載されていたりしますので、よく確認するようにしましょう。郷に入りては郷に従え、です。

4.共通語を使おう

 方言のことではありません(苦笑)。Mail に書く言葉は、多くの人がわかる共通の言葉を書きましょう。質問の Mail などで、ついつい自分がいつも使っている、勝手な略語を使って説明する人を見うけますが、相手がわからなければ、回答がくることはありえません。もし、略語を使わなければならないとなった場合は、言葉を使う前に、正式な表現を記載しておくようにしましょう。  

 略語を使う危険性はもう一つあります。それは、検索効率の悪化です。ML などのように、大量のテキストデータが存在する場合、一つ一つ見ていったのでは、時間だけが無用に過ぎていきます。このため、キーワードによる検索を行うわけですが、自己流な略語を使っていると、キーワードにヒットしないため、埋もれた情報となってしまうことがあります。せっかくの有益な情報であっても、自己流な略語を使っていたが故に、くず情報と同じ扱いを受けてしまうのでは、悲しいですよね?

5.引用は最低限に!

 メールを返信するときに全文引用する方をよく見かけますが、私はその効用に疑問が残ります。全部引用をされている方には、届いているメールを相手に見せることで、改変していないことを示す、という説明をされるようですが、基本的に現在の Internet 網で、部分的にしか届かないような配送経路は、ほとんどありません。メールは原則として、送信元にコピーが残ります(設定によって、元メールを残さないようにすることも可能)ので、改変しているかどうかは、自分の発信したメールと確認すればすむ話です。むしろ、手元にあるものと同じものを、金をかけて落とさせられることの方が、はるかに苦痛です。

 なにもすべての引用を捨てろ、といっているわけではありません。話の流れ的に、引用を使ったほうが話がつながる、という場合もあるでしょう。しかし、やみくもに段落全体を引用したのでは、話のピントもずれてしまいます。自分の返信の内容を見直して、必要な部分のみを引用するようにすると、Mail 全体がすっきりして、読みやすくなります。

6.適切な改行をいれる。

 使っているメーラーにもよるのですが、初心者に多く見られる誤りは、メールの内容表示ウインドウが、右端で自動的に改行してくれるものだ、と考えることです。Outlook Express などは、画面端に達すると、自動で折り返してくれますが、相手のメーラーが同じように働くとは限りません。いちいちスクロールしないと見えないのでは、私はそのメールは読まずに捨てます。

 上記のメールを見てください。右端からつぎの行に続きません。文章の量が少ないので、スクロールしても読めますが、文章量が増えてくると、スクロール作業自体が相当な負担になります。メーラーによっては、自動改行するものもありますが、それを相手に求めるようなメールは、出すこと自体が問題です。メールは読ませるのではなく、読みたくなるように書く物です。

 改行することは、他にも意味があります。それは引用する時にわかります。きちんと改行されていれば、すべての行に引用符がつきますが、改行されていないと、先頭の行にだけ引用符がつきます。このため、どこまでが引用でどこまでが相手の書いた文なのかがわからなくなり、メールの見通しが大幅に落ちます。このようなメールを引用する時には、いちいち改行をして引用符を付加するという、非常に面倒な手間を相手に押しつけることになります。

7.件名はメールの内容を簡潔に現わしたものにする。

 メールが郵便と決定的に異なることの一つに、内容を読む前に、件名を読むことができる、ということがあります。メールを読む前に件名が読めるため、メールの内容の概略は、件名でつかむことができるわけで、熟練者になるほど、件名による取捨選別を行っています。

 初めての相手に送るからといって、件名を「はじめまして」とするケースをよく見かけますが、これは絶対に避けましょう。ダイレクトメールなどは、このように件名をわざと抽象的にすることで、いちいちメールを読ませるようにしていることが多く、また、あいさつ程度で終わってしまうようなメールだったりするため、よく見過ごされることがあります。

 このように見過ごされたときに、「誰も反応しない、不親切だ!」と独り善がりな判断をして、ML を去ったり、Mail の送付を止めたりする人をまれに見うけられますが、それはお門違いもいいところです。ML は無償サポートセンターではありません。回答している人は、自らの好意によって行っているだけであり、義務や職業ではないのです。それを回答するのが当たり前のような態度をとることは、回答者の好意を踏みにじる以外の何者でもありません。

 相手が、自分の出した Mail にすぐ反応しないからといって、相手を非難してはいけません。相手にも都合があります。また、自分の出した Mail に攻められるべき部分があったのかもしれません。いろいろな原因が絡まって、 Mail が帰ってこないのですから、ひたすら待つか、再度 Mail を送って相手の反応を待ちましょう。

 Mail は子供のおもちゃではありません。きちんとした分別を持った大人のアイテムです。効率的に活用するためには、それなりのルールがあります。これを守れないような人は、そもそも Mail を出してはいけないのです。公の場において取るべき態度があるように、Mail のやりとりの中にも、ふさわしい対応があるのです。きちんとした分別を持っていれば、実年齢は関係ないのも、Mail の良いところです。


Last Update is 2001/04/27.