PLC の導入(仮題)

電力線ネットワークは使えるのか?

1.PLC とは何か。

 wikipedia より引用

 電力線搬送通信(でんりょくせんはんそうつうしん)は、電力線を通信回線としても利用
する技術。電力線通信、PLC(Power Line Communication)、PLT(Power Line Telecommunication)
とも呼ばれる。

 PLC とは、乱暴な言い方をすると、コンセントを使った LAN 、といえます。家庭内には、ほぼ一部屋に一つ以上のコンセントが設置されているわけですが、コンセントはそのまま建物の中を電線によって繋がっています。この建物の中を張り巡らされている電線を、LAN のケーブルとして利用しよう、ということです。

 PLC が製品として登場するまでは、いろいろな紆余曲折がありました。詳しくは、上記の Wikipedia 等を参照していただくこととしますが、現時点でも完全に解消されている、とはいえないようです。平成20年8月15日現在で確認するかぎり、HD-PLC、HomePlug、UPA の三種類の規格に対応した製品が販売されています。

2.PLC のメリット/デメリット

 PLC の最大のメリットは、新たに通信ケーブルを敷設する必要がない、ということにつきます。現在多くの家庭に導入されている ADSL は、自宅までの引き込みについては電話線を用いるため、ADSL モデムを設置する場所が、モジュラージャック(以下 MJ と標記)の近くとなります。多く家庭では、電話の設置場所を茶の間ないしは居間にするため、MJ の設置場所も茶の間あるいは居間となります。ADSL モデムも必然的に茶の間ないしは居間に設置されることになるわけですが、ADSL モデムに接続する PC の設置場所は、茶の間とは限りません。というより、多くの家庭では、茶の間ではなく、夫婦の部屋や子供部屋といった場所に PC を設置することになります。そうすると、PC と ADSL モデムを接続する LAN ケーブルの存在が問題となります。新築する建物の場合は、設計段階において、配管を壁等に埋め込むことにより、ある程度の自由度が確保された配線を用意することができますが、既存の住宅については、そうはいかないわけで、部屋の隅を這わせたり、鴨居の隙間を通したり、といろいろな苦労を伴います。

 このような配線の苦労を解消するものとして、近年は利用が進んでいる無線 LAN があります。たしかに、電波を利用することで、配線は不要になる一方、電波を使うが故に、常に一定の通信速度が確保されるわけではない、という問題があります。単純なインターネットの閲覧レベルであれば、無線 LAN であってもそれほど問題にはなりませんが、動画データを扱うような環境、家庭内のメディアサーバーによる動画配信、プロバイダ等による広帯域通信を利用した動画配信、等では、その帯域がある程度確保され、かつ、常時利用可能であることが要求されることになります。そのような環境では、無線 LAN は配線は不要であるというメリットよりも、帯域が不足するというデメリットがはっきりと露見されてしまいます。

 このようなときには、PLC は非常に有効です。機器を設置する場合には、必ずコンセントはそばにあるはずであり、コンセントから機器までの間であれば、さほどの長さも必要ない、ということになります。従って、無線 LAN では帯域不足となるような場合でも、PLC と利用することで、帯域を確保しつつ自由度の高いネットワークが構築される、ということになります。

 さて、メリットの高い PLC ですが、デメリットはないのでしょうか?

 まずは、機器の導入コストです。いくら PLC を利用したい、と考えても、機器がなければ使えません。さらに、ネットワーク機器はその性質上、最低でも2台で1組となることから、最初の導入時にはセットで購入することが必要となります。この点は結構見落としがちになってしまうポイントで、メーカーでも親子のセットで販売していますが、一部のルータには、AC アダプタ部分に PLC アダプタを統合した製品があり、ついつい、これだけを買えば PLC が使える、と誤解してしまう場合があります。

 もう一つの問題は、規格が複数存在する、ということです。これはある意味でやむを得ないところからもしれませんが、先述したように、現時点では3種類の方式があり、メーカーによって、対応している規格が異なります。となると、どの製品を購入するのがもっともよいか、という点については、まだ断言できないところにあります。地方都市などでは、HD-PLC のみしか商品陳列がなかったりするので、ある意味悩む必要もないのですが、通販や大規模店舗にて購入する場合には、注意が必要です。いずれ、淘汰が発生して、どれか一つに統一されることにはなると思いますが、現時点でその結果を予想することは、相当に困難です。

 最後に、これは意外にはまるポイントになりそうですが、ノイズカッターとの相性が悪い、という点です。PLC は、本来の電力供給として使う部分以外のところを用いて通信するわけですが、これは一方では、電力線にのるノイズと区別することが難しい、といえます。したがって、家電量販店などで販売されている、ノイズ除去機能付き OA タップ、などを使った場合に、PLC の信号が、ノイズとして扱われてしまうことがあります。これは製品の取扱注意事項にも記載されているところですが、うっかりはまってしまうポイントであるといえます。実際に、はまってしまった人間がいう台詞ですから、説得力があります(笑)。

3.PLC の導入

購入した PLC 機器

 今回、私が導入した PLC は、I/O Data 製 PLC-ET/MY-R です。これをみて、ブロードバンドルータじゃん、と思った方、ある意味正解です。これは、ブロードバンドルータが本命で、AC アダプタに PLC 機能を内蔵したものです。Yahoo オークションにて開始500円で始まっていたので、入札して、最終的に3,000円で落札することとなりました。入札時点では、PLC アダプタが同梱されていて、ブロードバンドルータと PLC アダプタは別に利用できるもの、と考えていたのですが、届いた商品をみると、AC アダプタの変わりに PLC アダプタとなっており、PLC アダプタとブロードバンドルータを別に使うことはできないものでした。とはいえ、個人的には、 PLC アダプタとして3,000円で購入できているので、メリットは確かにあった、といえるのですが。

 さて、無事落札できたわけですが、先述したように、PLC アダプタは1台では役にたちません。相手が必要です。ということで、もう1台の PLC アダプタが必要となるわけですが、これについては、もう一台 PLC-ET/MY-R を落札して、対応することとなりました(笑)。なぜか、1台目よりも安価な 2,000円での落札となったので、有難いところではあります。

PLC の設定その1 親機から子機への設定変更

 落札品も無事届き、早速実家で設定をすることにしました。まずしなければならないことは、両方とも親機の設定となっていることから、一方を子機に切り替える、という作業を行う必要がありました。製品がブロードバンドルータ+ PLC 対応 AC アダプタということから、親機と子機の切り替えは、物理スイッチではなく、Web ブラウザから行う、という状態となっていました。付属の説明書を読むと、IP アドレスが 192.168.0.249 となっていることから、PC のネットワークアドレスを 192.168.0.x に変更し、Web ブラウザを立ち上げて、設定画面を開きました。ラジオボタンで、子機側に変更して更新すると、子機としての設定は完了です。

PLC の設定その2 IP アドレスの変更

 ええと、この部分実はすっかりわすれていて、設定後になぜ繋がらないのか、わかりませんでした(苦笑)。しかも、同じ機器を使っているわけですから、それぞれにぶつからないように IP アドレスの再割りあてを行わなければなりませんので、この点も注意が必要でした。

PLC の設定その3 子機の登録

 HD-PLC は親子関係となりますので、親子登録をする必要があります。今回購入した、PLC-ET/MY-R では、次の通りの操作が必要となりました。

  1. 子機側で設定初期化ボタンを押す(3秒間)。
  2. 親機側で、セットアップボタンを押す(1秒間)。PLC ランプが点滅することを確認する。
  3. 子機側で、セットアップボタンを押す(1秒間)。PLC ランプが点滅して、接続設定がなされる(自動処理)
  4. 子機側で、PLC ランプが点灯することを確認する。

 設定中に不安を感じることは全くありませんでした。むしろ拍子抜けするほど、あっさりと繋がりました。セット品ではないものの、同じメーカーの機器ですので、設定できて当たり前、というほうが正しいかもしれません。設定字の注意点は、PLC アダプタを同じコンセントに接続する、ということですね。実際には、同じテーブルタップに接続して設定を行いましたが、これはマニュアルにも記載されている重要ポイントとなっています。設定後に、本来の使用場所にもっていき、正しく接続されることを確認しました。

4.PLC の使い勝手

 基本的には、速度もきちんと出るので、なかなか良いのですが、やはりノイズカッターが搭載されている OA タップは鬼門のようで、普通のテーブルタップで使用すると通信できものが、OA タップに切り替えると駄目、という状態を目の当たりにしました。タップそのものには、PLC 対応の文字はなかったので、ある意味当然の結果といえました。

 PLC アダプタと PC は、LAN ケーブルで接続することになります。従って、いわゆる有線ネットワークとしての問題は残ります。ケーブルの取り回しなどを考えると、Note PC に直接接続することは、あまりメリットとはいえないのですが、固定された PC については、配線を隠すスペースもあることから、通信速度が確保できる PLC アダプタは、メリットがあるといえます。

 PLC は Ethernet コンバータと同様に扱えるため、単体ではもちろんですが、Hub などに接続することで、複数機器を使用できるので、メリットが高いといえます。今回の目玉の一つが、複数の Note PC の接続、ということなので、今後 Hub を接続して、複数台から利用可能にするつもりです。この用途に、添付されてきた(爆笑)ブロードバンドルータを使おうかな、とも考えています。

 もう一つの使い道として考えているのが、Link Player との接続です。当初は茶の間に接地していたのですが、奥の部屋に移動したところ、無線 LAN では接続できなくなってしまいました。映像の帯域も必要とする以上、転送がとぎれとぎれになる無線 LAN では、一抹の不安が残ります。これを PLC でカバーしよう、と考えています。時間的な余裕が足りなくなってしまったため、現時点では構想の段階ですが、理論上は問題がないので、次回には設置する予定です。もっとも、テスト用のサンプル動画の転送が間に合わず、現在も WAN 回線にて、500GB ほど転送中だったりします。直結でも数日はかかるはずなので、WAN 回線の接続テスト代わりに、流しておいてみます(苦笑)。


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